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第10章 執着

喉の渇きに目を開くと、見慣れた天井が見えた。

「気がつきましたか？」
「さくら、い、さん…？」
「はい。お水飲まれますか？」

涼子が身体を起こすと櫻井は背中に手を回し支える。差し出された常温のお水を何度かに分けてゆっくりと飲むと、じんわりと身体に染み込んで来るようで、涼子は ほぅ、と息をついた。

「もういいですか？」
「はい」
「では今日はもう寝てください」

涼子の身体をベットに押し込み、布団をかける。

「あの…私？」
「倒れたんですよ。お医者様からは休むようにと。とにかく眠ることが1番です。ゆっくりお休みになってください」

倒れたんだ……

そういえばお客様の部屋を出てからあまり記憶がない。ぼんやりとした涼子の視界の片隅に、櫻井が腰を下ろす姿が映る。

看病してくれるんだ…

熱に浮かされたまま、涼子は嬉しさに頰が緩むのを感じた。