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ポン・デ・ザール橋で逢いましょう
第1章 其の壱
「…俺が…俺が守ってやるよ…!」
忍が叫ぶように言い放った。
「…え?」
百合子の潤んだ瞳が大きく見開かれる。
「俺が百合子さんを…いや、義姉さんを守ってやる。
兄さんは仕事で忙しいだろうから、俺が義姉さんを守る…!」
百合子の無垢な美しい瞳が驚いたように忍を見つめる。
「…だから…その…あんまり心配しないで…」
…最後は、自分に気恥ずかしくなり小声になってしまう。

「…忍さん…。ありがとう…」
百合子は密やかに花が咲くように微笑んだ。
それは控えめではあるが、嬉しそうな気持ちがひたひたと伝わってくるような…そんな微笑みであった。

忍が口を開きかけた時、大食堂の扉が開き厳しい顔をした家政婦が現れた。
勤続四十年をゆうに超えたいかにも底意地が悪そうな家政婦が、居丈高に告げる。
「百合子様、奥様がお呼びです。お早く食堂にお越しください」
百合子は弾かれたように貌を上げた。
「はい。今、参ります」
家政婦の後を小走りで追いながら、忍を振り返った。
そして、その可憐な口元に笑みを浮かべると小さく頷き、そのまま大食堂へと姿を消した。

忍は照れくささを隠すように呟いた。
「…別に…兄さんに頼まれたからさ…」
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