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ポン・デ・ザール橋で逢いましょう
第1章 其の壱
「俺が義姉さんを守る」
その言葉は図らずも、それから余り日が経たない内に実現することとなった。

親戚を集めて新妻お披露目という名目の内輪のお茶会が開かれた日のことだ。
父親と兄は出張で神戸に出向き、いわば女系家族のみのお茶会だった。

風間の母親の姉が百合子の着物をじろじろと見渡して、鼻先で笑ったのだ。
「まあまあ、百合子様は大層古風なお着物をお召しなのねえ。今時の若いお嬢様にしてはお珍しい。
…こんなにお美しい方なのだから、もっと華やかで現代的なお着物をお召しになったらよろしいのに…」
金満家の叔母はレースの白いハンカチで口元を覆い含み笑いをする。
百合子は一瞬で首筋を朱に染め、俯いた。
百合子が実家から持参した着物の古さを揶揄されたのだ。
確かに百合子が着ている古代紫の絞りの着物は、とても品の良いものだが、一目で年代物だと分かる柄は古さが否めないものであった。
百合子が持参した着物の数は多かったが、それら全ては新しく誂えたものではなかったのだ。

母親が細い眉を上げて、百合子を見遣った。
「百合子様がご実家から持っていたらしたお着物ですわ。
…亡くなったお母様やお祖母様が愛用されていたお着物だそうですよ。
…まあ、公家の方は物持ちの良いことで…。
百合子様は新品を一切お持ちにならなかったの。
お若いのに倹約の精神がお有りなんて、お偉いこと。
私も見習わなくてはね。すぐに三越の外商を呼びつけてしまうから」
母親や叔母たちは一斉に高笑いした。

母親はこの結婚に最初から良い顔はしていなかった。
新興産業で一代を成した家の娘として育った母親は、百合子の公家の家柄にコンプレックスを抱いていたからだ。
百合子の持つ品格や辺りを払うような気高さにも畏怖めいたものを感じていたのだ。

百合子は黙って俯いた。
華奢な肩が小さく震えていた。
忍は純白のクロスの上に両手を突いて立ち上がった。
「相変わらずぐちゃぐちゃうるせえババア達だなあ!」
女達の高笑いが一斉に止んだ。
母親が気色ばんだ様子で忍を睨んだ。
「何ですって⁈」
「うるせえからうるせえって言ったんだよ、ババア。
他人の着物の悪口なんか言えたクチかよ。…趣味の悪い洋服や着物しか持ってない癖に。
…義姉さんの着物の方が、ずうっと上品だ」
百合子が驚いた眼差しで忍を見上げた。
忍は安心させるように頷いた。

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