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ポン・デ・ザール橋で逢いましょう
第1章 其の壱
逃げ込んだ先は、薔薇園の奥…ローズマリーやペパーミント、フェンネリなどが群生するハーブ園だ。
四阿に隠れるこの場所は、滅多に人がこない格好の隠れ場所だった。
息急き切って二人はその場に座り込んだ。
肩で息をしながら、思わず貌を見合わせる。
どちらからともなく笑いが漏れた。
忍は声を立てて笑う百合子を初めて見た。
百合子の笑いはなかなか収まらない。
余りに笑い転げるので、忍は却って心配になった。
「…だ、大丈夫?義姉さん…」
百合子は額に白い手を当てて、深呼吸をした。
「大丈夫です。…私、こんなに笑ったの初めて。…それから、こんなに走ったのも…」
その笑顔は木漏れ日よりも眩しくて、忍は思わず息を飲んだ。
「…良かった…。て、言うか…何だかごめん…」
「どうして忍さんが謝るの?」
「…こんなことしたら…余計義姉さんの立場が悪くなるのかな…」
やや不安になる。
…これでもっと義姉さんが虐められたらどうしよう…。
俺はやっぱり考えなしだ…!
忍の心中を見抜いたかのように、百合子は首を振った。
そして忍の瞳を覗き込むように見つめて、口を開いた。
「私、忍さんが庇って下さって、とても嬉しかったです。…本当は凄く悲しくて泣きそうでした。
だから…本当に嬉しかったのです…」
「…義姉さん…」
百合子の絹糸のように艶やかな黒髪が風に吹かれ、忍の頬を掠めた。
ライラック色のリボンで結んだ髪を長く垂らしている百合子は、まるであどけない少女のようだった。
忍の心臓が煩いくらいに音を立てる。
…静まれ、静まれってば!

…と、忍をじっと見つめていた百合子が、黒目勝ちの瞳を驚いたように見開き声を上げた。
「な、なに…?」
「忍さんの瞳、とても綺麗な色…!琥珀のような色…!」
ああ…と忍は肩を竦めた。
「…俺のばあさん、ロシア人だから」
「え?…そうなんですか?でも…旦那様は黒いお目々だわ」
…兄貴の目の色…そんな近くで見たのか…と、忍は訳の分からない嫉妬めいた感情に襲われる。
「俺だけばあさんの血が濃く出たみたい。ハーフの親父はまるっきり日本人の顔立ちなのにな。兄貴もさ。この貌のお陰で、昔はよく虐められたよ。
でも、そんな奴らは片っ端から殴ってやったから、今じゃ誰も何も言わない。いや、言わせない!」
百合子がまた可笑しそうに声を立てて笑った。
…義姉さんが笑うとなんでこんなに嬉しいんだろう…。
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