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ポン・デ・ザール橋で逢いましょう
第1章 其の壱
「忍さんて、面白い方ですね…!それに、強くてお優しいわ…」
微笑みを湛えながら…しみじみとした口調で百合子が言った。
「…私を庇って下さって、励まして下さって…。
ありがとうございます。
私、忍さんが弟で本当に良かったです。
…少し落ち込んでいたのですが…元気になりました」
透き通るような白い頬は走ったためか紅潮し、まるで咲いたばかりの薄紅色の薔薇の花のようだった。
「…義姉さん…」
そうして百合子は好奇心に満ちた無垢な眼差しで、忍の瞳を尚も見つめた。
「本当に綺麗なお目の色だわ…。まるで高価な宝石みたい…。
こんなに綺麗なお目を、初めて見ました…」
自然と忍も百合子の瞳を見つめ返す。
長く濃い睫毛に縁取られた黒い湖のように濡れた瞳…。
…綺麗なのは、義姉さんだ…。
忍は心の中で呟く。
…こんな近くで…これって…
…まるで…
…キスするみたいな…
心臓が早鐘のように打ち始めた時…
「あれ、坊ちゃん。…若奥様も…。そんなところで何をなさっているんです?」
のんびりした明るい声が飛んだ。
振り返ると、料理長のタキが血色の良い貌ににこにこと笑顔を浮かべていた。
料理に使う庭のハーブを摘みに来たのだろう。
手には大きな籠を抱えていた。
忍は叫ぶ。
「胸糞悪いババア達とケンカしたんだ」
タキは驚くこともなく、やれやれと言った風に首を振った。
「またですか?本当に坊ちゃんの堪え性のないことと言ったら…。まあ、若奥様まで連れてこられたのですか?」
百合子には好意的な微笑みを浮かべ、一礼する。
「じゃあ、タキの自慢のスコーンと胡瓜のサンドイッチはまだ召し上がっていないんですね?」
悪戯めいた口調で尋ねるタキに、忍は甘えたようにねだる。
「そうだ!ねえ、タキ。スコーンとサンドイッチ、食べさせてよ。あと、タキのミートパイも!
…義姉さん、タキのミートパイはほっぺたが落ちるくらいに美味しいんだ!」
タキは大げさに肩を竦め、陽気に笑い出した。
「全く、坊ちゃんにゃあかなわないですね。
…さあさあ、お二人とも食堂へどうぞ。タキの自慢のミートパイをご馳走しますよ。それからハーブティもね」
二人は貌を見合わせて、嬉しそうに笑った。
忍が手を差し伸べる。
「さあ、行こう。義姉さん」
「…はい。忍さん」
百合子がしっかりと手を握る。
…その華奢な手は、ほんのりと暖かくなっていた。
微笑みを湛えながら…しみじみとした口調で百合子が言った。
「…私を庇って下さって、励まして下さって…。
ありがとうございます。
私、忍さんが弟で本当に良かったです。
…少し落ち込んでいたのですが…元気になりました」
透き通るような白い頬は走ったためか紅潮し、まるで咲いたばかりの薄紅色の薔薇の花のようだった。
「…義姉さん…」
そうして百合子は好奇心に満ちた無垢な眼差しで、忍の瞳を尚も見つめた。
「本当に綺麗なお目の色だわ…。まるで高価な宝石みたい…。
こんなに綺麗なお目を、初めて見ました…」
自然と忍も百合子の瞳を見つめ返す。
長く濃い睫毛に縁取られた黒い湖のように濡れた瞳…。
…綺麗なのは、義姉さんだ…。
忍は心の中で呟く。
…こんな近くで…これって…
…まるで…
…キスするみたいな…
心臓が早鐘のように打ち始めた時…
「あれ、坊ちゃん。…若奥様も…。そんなところで何をなさっているんです?」
のんびりした明るい声が飛んだ。
振り返ると、料理長のタキが血色の良い貌ににこにこと笑顔を浮かべていた。
料理に使う庭のハーブを摘みに来たのだろう。
手には大きな籠を抱えていた。
忍は叫ぶ。
「胸糞悪いババア達とケンカしたんだ」
タキは驚くこともなく、やれやれと言った風に首を振った。
「またですか?本当に坊ちゃんの堪え性のないことと言ったら…。まあ、若奥様まで連れてこられたのですか?」
百合子には好意的な微笑みを浮かべ、一礼する。
「じゃあ、タキの自慢のスコーンと胡瓜のサンドイッチはまだ召し上がっていないんですね?」
悪戯めいた口調で尋ねるタキに、忍は甘えたようにねだる。
「そうだ!ねえ、タキ。スコーンとサンドイッチ、食べさせてよ。あと、タキのミートパイも!
…義姉さん、タキのミートパイはほっぺたが落ちるくらいに美味しいんだ!」
タキは大げさに肩を竦め、陽気に笑い出した。
「全く、坊ちゃんにゃあかなわないですね。
…さあさあ、お二人とも食堂へどうぞ。タキの自慢のミートパイをご馳走しますよ。それからハーブティもね」
二人は貌を見合わせて、嬉しそうに笑った。
忍が手を差し伸べる。
「さあ、行こう。義姉さん」
「…はい。忍さん」
百合子がしっかりと手を握る。
…その華奢な手は、ほんのりと暖かくなっていた。