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ポン・デ・ザール橋で逢いましょう
第1章 其の壱
「こちらでございます」
濃紺の襟の詰まったドレスを着たアンヌと呼ばれる家政婦は、二階の東翼の奥の客室に三人をいざなった。
「次の間とバスルームも付いております。次の間にはジュリアン様がご幼少時にお使いになられたベビーベッドを設置いたしました。
ツカサ様に是非、お使いくださいませ」
アンヌはにこやかな笑顔で腰につけた鍵束をしゃらしゃらと鳴り響かせながら、部屋の奥へと進んだ。

フランス革命下で、暴動と略奪を免れたというこの屋敷は大層古いけれども高価なアンティーク家具や、見事な細工の調度品が品よく並べられており、親子三人が滞在するのに充分過ぎる広さであった。
司は目を輝かせて次の間に走って行った。
百合子は慌てて後を追う。

「ねえ、おかあちゃま!木馬!ブランコもある!」
客室と同じくらいの広さの部屋には、まるで遊園地にあるような白い木馬と室内用のブランコが備わっていた。
「…まあ、可愛いこと…」
まだ見ず知らずの…しかも逃亡するように日本を出てきた家族にここまでのもてなしをしてくれるジュリアンに心から感謝をした。
…そして、ここに至るまでの全ての手筈を整えてくれた暁にも…。
司はすっかりご機嫌で木馬に跨り、その次はブランコに乗って遊び出した。
「おかあちゃま!見て!ひとりでこげるよ!」
百合子はその天真爛漫な姿に思わず安堵の笑みを浮かべた。
…可愛い愛しい司…。
お母様は、貴方がいればどんなことでも乗り越えてゆけるわ…。

…思いは再び過去に引き寄せられる。
六年前…喜びに胸を高鳴らせ司の懐妊を告げた時、篤は信じられないかのように目を見開き、絶句した。
そしてすぐ様、百合子を抱きしめた。
「…ありがとう…百合子…本当にありがとう…。
君には…ずっと辛い思いをさせてしまったね…」
…夫は、泣いているようだった。
「…旦那様…!」
百合子もまた安堵と嬉しさと切なさから夫の胸で涙を流した。

…結婚して七年が経っていた。
なかなか子宝に恵まれなかった百合子は、数年前から姑の嫌味にひたすらに耐え続けていたのだ。
「昔は三年子無きは去れと言われたものですよ。
…まあまあ、今のお嫁様は悠長でよろしいこと。
それともやんごとない公家のお姫様は懐妊しにくくていらっしゃるのかしら?…相変わらず少女のようなお身体をされていらっしゃるものねえ…」
姑は百合子の身体を無遠慮に見回した。


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