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ポン・デ・ザール橋で逢いましょう
第1章 其の壱
…心尽くしの夕食と入浴を済ました司は、あっと言う間に寝ついてしまった。
ベッドの傍らで、司の健やかな寝顔を見つめている百合子の背後からそっと声がかかる。

「百合子。…おいで…」
忍はジュリアンの夜着とガウンを羽織っていたが、すらりと長身で日本人離れした彫りの深い貌立ちにとても良く似合っていた。
ランプの灯りに照らされた忍の髪は亜麻色に輝き、この西洋の一流の調度品に囲まれた部屋に見事に馴染んでいた。
百合子は一瞬、忍に見惚れた。
そして、改めて忍の輝くような若さと美貌を眩しく思った。
…忍さんは…やはりとても若いのだ…。
二十代半ばの忍は、もう三十路に入った自分にはきらきらと輝くような気後れしてしまうような存在なのだと改めて気づかされる。
それをとても切なく思う。
「…はい…」
頷く百合子の手を優しく取ると、忍は寝室へと導いた。

…寝室には天蓋付きの豪奢な寝台が目に入った。
繊細な模様のレースの布が寝台を覆い、純白の寝具が敷き詰められている。
…まるで…結婚初夜に相応しいような美麗な寝台…。

百合子は、己れの心臓が緊張で苦しいほど鼓動を立てるのを感じた。
忍が百合子の緊張を解きほぐすように肩を抱いた。
「…ネグリジェに着替えたんだね…。
よく似合う…」
忍の熱い視線が百合子の身体に注がれる。
…着るのを躊躇していた真珠色のシルクのネグリジェ…。
胸元が深く開き、レースが飾られている。
ウエストが高めの位置で絞られているデザインなので、百合子の胸の形が露わになるのも気恥ずかしく、なかなか着られないでいた。
だが、もうフランスに着いたので、思い切って勇気を出して袖を通してみたのだ。

「…あまり見ないで下さい。…着慣れないので、恥ずかしい…」
忍は貌を伏せた百合子の顎を持ち上げる。
「綺麗だよ。すごく…。…百合子…」
柔らかな桜色の唇が、やや荒々しく奪われる。
青年の肉厚な舌が、急くように大胆に百合子の口内を探り始めた。
探り当てた百合子の舌を、痛いほど絡められる…。
…今までにない性急なくちづけに、百合子は身体を震わせた。





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