この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ポン・デ・ザール橋で逢いましょう
第1章 其の壱
「…んっ…あ…は…あ…っ…」
くちづけに少し慣れたとはいえ、このように濃厚な…性の交わりを連想させるようなくちづけは初めてだ。
息もつけぬほどに舌を絡められ、口内を蹂躙される。
…こんな…お互いの唾液を交換し合うような…生々しく淫らなくちづけを百合子はしたことがなかった。
篤は百合子を少しでも荒々しく扱うことをとても恐れていたようだった。
まるで壊れ物を扱うかのように丁寧に優しく妻を抱いたのだ。
忍は百合子の舌を千切れるほどに絡め、吸い尽し、唇を情熱を込めて食む。
「…んんっ…は…ああ…んっ…」
掠れた声で喘いだ百合子の唇を名残惜しげに解放し、薄い桜貝のような耳朶を噛んだ。
「…百合子…まだ…駄目…?もう…我慢できない…」
若々しい青年の欲情を滲ませた熱い囁きが、百合子の鼓膜に吹き込まれる。
「…忍さん…!」
潤んだ瞳で忍を見上げる。
熱情を込めた琥珀色の瞳が百合子を見つめる。
「まだ、男に…俺に抱かれるのが怖い?」
百合子は小さく首を振る。
…怖くはない…。
最初から、忍を怖がってはいない…。
怖いのは…今の幸せ…
…幸せすぎて怖いのだ。
だから、踏み出せない。
…それに…。
「…忍さんを怖がってはいません…でも…」
「でも…?」
…何かあったら、忍を頼りなさい。
あいつは君を…大切に思っている…。
亡き夫の言葉が蘇る。
百合子は苦しげに口を開く。
「…旦那様は、ご存知だったような気がしてならないのです。私があの頃から忍さんのことを好きだったことを…。それから…忍さんが私を思ってくださることも…」
意外な名前が出て来たことに、忍は眼を見張る。
「兄さんが…?」
「日本を出てから思い出すのです。…旦那様は全てをご存知だったのではないかと…。
亡くなられる朝、旦那様は…何かあったら忍さんを頼りなさいと、念を押されました。
まるで何かを予見するかのように…」
…あの時の静かな…どこか達観されたかのような眼差し…。
どうしても、忘れることができない…。
「…旦那様は…司の顔を見ることもなく亡くなられてしまわれました。
…それなのに…私だけ幸せになって良いのでしょうか?
旦那様は、私達の気持ちもご存知だったというのに…!それは…裏切りなのではないでしょうか…?」
百合子の陶器のように白い頬に涙が伝い始めた。
忍は掻き抱いていた腕を静かに解いた。
くちづけに少し慣れたとはいえ、このように濃厚な…性の交わりを連想させるようなくちづけは初めてだ。
息もつけぬほどに舌を絡められ、口内を蹂躙される。
…こんな…お互いの唾液を交換し合うような…生々しく淫らなくちづけを百合子はしたことがなかった。
篤は百合子を少しでも荒々しく扱うことをとても恐れていたようだった。
まるで壊れ物を扱うかのように丁寧に優しく妻を抱いたのだ。
忍は百合子の舌を千切れるほどに絡め、吸い尽し、唇を情熱を込めて食む。
「…んんっ…は…ああ…んっ…」
掠れた声で喘いだ百合子の唇を名残惜しげに解放し、薄い桜貝のような耳朶を噛んだ。
「…百合子…まだ…駄目…?もう…我慢できない…」
若々しい青年の欲情を滲ませた熱い囁きが、百合子の鼓膜に吹き込まれる。
「…忍さん…!」
潤んだ瞳で忍を見上げる。
熱情を込めた琥珀色の瞳が百合子を見つめる。
「まだ、男に…俺に抱かれるのが怖い?」
百合子は小さく首を振る。
…怖くはない…。
最初から、忍を怖がってはいない…。
怖いのは…今の幸せ…
…幸せすぎて怖いのだ。
だから、踏み出せない。
…それに…。
「…忍さんを怖がってはいません…でも…」
「でも…?」
…何かあったら、忍を頼りなさい。
あいつは君を…大切に思っている…。
亡き夫の言葉が蘇る。
百合子は苦しげに口を開く。
「…旦那様は、ご存知だったような気がしてならないのです。私があの頃から忍さんのことを好きだったことを…。それから…忍さんが私を思ってくださることも…」
意外な名前が出て来たことに、忍は眼を見張る。
「兄さんが…?」
「日本を出てから思い出すのです。…旦那様は全てをご存知だったのではないかと…。
亡くなられる朝、旦那様は…何かあったら忍さんを頼りなさいと、念を押されました。
まるで何かを予見するかのように…」
…あの時の静かな…どこか達観されたかのような眼差し…。
どうしても、忘れることができない…。
「…旦那様は…司の顔を見ることもなく亡くなられてしまわれました。
…それなのに…私だけ幸せになって良いのでしょうか?
旦那様は、私達の気持ちもご存知だったというのに…!それは…裏切りなのではないでしょうか…?」
百合子の陶器のように白い頬に涙が伝い始めた。
忍は掻き抱いていた腕を静かに解いた。