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ポン・デ・ザール橋で逢いましょう
第1章 其の壱
…六年ぶりに見る男の裸体であった…。
忍の身体は細身ながらも引き締まり、美しい筋肉に覆われていた。
そして彫りの深い…それでいて甘やかな端正なる貌が情熱的に百合子を見つめていた。
…まるで…美しい彫像のようだわ…。
百合子は睫毛を震わせて、忍を見上げる。
こんなにも美しく若々しい青年が、これから自分を抱こうとするのだろうか…。
信じられない…。
忍の日本人離れした華やかな美貌とその美しい肉体を真近で見て、自分の年齢を思い出す。
…忍さんより六歳も年上の私は…幻滅されないだろうか…。

忍は褒め称えてくれるが、六年も男に抱かれることなく歳を重ねてきた自分は、味気なくがっかりするような身体なのではないか…と。

ことに忍は星の数ほどのあまたの美しい女性たちを抱いてきた筈だ…。
その忍が、自分を抱いて失望しないのだろうか…。

…そして百合子は恐る恐る目の前の男の下腹部を見つめる。
夏草を思わせる焦げ茶色の茂みの下…聳え立つように屹立した雄々しい牡の像が百合子を怖気づかせる。

男の性器を…ましてや勃ち上がった性器をこんなにも近くで見るのは初めてのことだった。
亡くなった夫は、己れの性器を百合子に晒すことはしなかった。
可憐な少女のような百合子に、生々しい性を見せることを憚ったのだ。
篤は優しく父性愛に満ちた夫だった。
性交は至って穏やかなものだった。
だから百合子はとても奥手で、性についての知識も未だに疎いことが多かった。

しかし、忍の牡を目にした瞬間、己れの下腹部が甘く疼いたことに気がついた。
それは、未だかつて感じたことのない性愛の甘く淫らな疼きだった。
未知の感覚に、百合子は狼狽した。

…私は…忍さんの身体を見ただけなのに…こんな気持ちになるなんて…。
なんて淫らな…。
困惑したように貌を背ける百合子の顎を上向ける。
「…よく見て…百合子…。君がほしくてたまらなくて…こんなになってる…」
忍の艶めいた囁き声に背筋が震える。
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