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ポン・デ・ザール橋で逢いましょう
第1章 其の壱
「…忍さん…」
百合子の密やかな声を聞き、忍はその美貌を綻ばせた。
「こんなところにいたのか。…探したよ。百合子…」
忍は大股で百合子に歩み寄ると朗らかに笑いかけた。
「船室に君がいないから、何処に行ったのかと焦ったよ」
改めて向かい合うと忍の背の高さ、そして細身ながら引き締まった体躯が間近に感じる。
百合子は不意に気恥ずかしくなり、貌を伏せた。
「すみません。…司が眠ったので…少し外の風に当たりたくて…」
潮風に掻き消されそうに小さな声で答える百合子の手を、忍は黙って握りしめた。
夜目にも白く輝く百合子の手が忍の手の中ではびくりと震えた。
「…こんなに冷えて…風邪を引いたらどうするの…」
甘く囁かれ、そのままその胸に引き寄せられそうになり、百合子は思わず忍から逃げるように手を引いた。
「…あ…」
忍を拒むかのような行動をしてしまったことにすぐさま詫びる。
「…ご、ごめんなさい…私…」
忍はそんな百合子に安心させるように笑いかけた。
「いいだよ、気にしないで。…俺もまだ義姉さんとこうして一緒にいることが信じられなくて、ちょっと舞い上がってる…」
日本人離れした美しい瞳が照れたように細められる。
百合子もつられて、小さく笑った。
百合子が笑ったことにほっとしたように忍は快活に話し始める。
「そのドレス、よく似合うね」
眩しそうに百合子の姿を見渡す。

縣家から埠頭へと向かう際に、縣家の執事の機転で忍と百合子は下僕とメイドの制服に着替え、車に乗り込んだ。
使用人の格好なら目立たないだろうという配慮だった。
船室に入ってから、その執事が持たせてくれたドレスに着替えたのだ。
「旦那様が以前に贈り物としてお買い求めになり、そのままお使いになっていないドレスです。よろしければ是非お持ち下さい」
手渡してくれた幾枚かのそれは、高価なものだと一目で分かる品物で、百合子は恐縮した。
しかし傍らの暁が、その目を奪われるような優美な美貌に優しい微笑みを浮かべ、ややいたずらっぽく言った。
「受け取って下さい。パリではドレスでお過ごしになるのですから、今からスカート捌きの練習をされて下さいね」

シルクタフタでできたラベンダー色に菫色のレースがふんだんにあしらわれた裾の長いドレスは百合子の品の良い美貌に良く映えていた。
「…とても綺麗だよ、百合子…」
忍が優しく百合子の頬に手を伸ばした。
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