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ポン・デ・ザール橋で逢いましょう
第2章 カルチェ・ラタン
「奥様、お召し替えのお手伝いをいたします」
メイドのルイーゼが衣装部屋からアフタヌーンドレスを捧げ持ち、現れた。
「ありがとう、ルイーゼ」
ルイーゼはジュリアンの屋敷に勤めていたメイド頭だった。
日本人のジュリアンの母親にずっと仕えていて、日本を行き来していたこともあり、日本語も堪能だった。
新居に引っ越すに当たりジュリアンが
「シノブ、ユリコの為にルイーゼを連れて行くべきだ。
ルイーゼは明るくて気働きはするし、きっとユリコの力になるよ」
と親切に勧めてくれたのだ。
確かにルイーゼは優秀なメイドだった。
十代からジュリアンの母親に仕えていたこともあり、日本語は母国語のように達者だった。
言葉だけではなく、日本人のことを良く理解しているルイーゼはフランスに慣れない百合子に的確なアドバイスやサポートをしてくれた。
司のエコール・マテルネルの入園に当たっても一緒に学校に行き、面談の際に通訳をしてくれたおかげでスムーズに入園することも出来たのだ。
歳も百合子より数歳下と近いので、親しみも直ぐに湧き…百合子のパリでの生活の何よりの心強い味方であった。
「今日はどちらのドレスになさいますか?今日は少し暑いようですわ。奥様のお好きな麻入りのドレスになさいますか?」
と、日本で作られたらしい白地に青い小花が描かれたドレスを勧めてくれた。
…ドレスは全てジュリアンが手配してくれたものだ。
「それにするわ。ありがとう」
白いレースのキャミソールの上からコルセットの紐をきつく締め上げながら、ルイーゼはうっとりとしたように声を上げる。
「まあ…!奥様のウエストの細さといったら…!コルセットなど必要ないほどですわね。ジュリアン様のお母様も華奢な方ですが、それ以上ですわ。日本の女性は皆、こんなに細くていらっしゃるのかしら」
百合子は恥じらうように俯く。
百合子は使用人に裸に近い姿で世話をされることに慣れてはいない。
継母が来てからは百合子付きの女中は継母に奪われてしまったから、自分のことは自分でするようにしていたのだ。
だから本当は自分で支度をしたかったが、
「いけません!奥様は上流階級の奥様なのですよ。何しろ、ロッシュフォール侯爵家の次期当主様のご友人なのですから。
ご自分でお支度されるなんてとんでもないことです」
…ここ、パリではロッシュフォール家の威厳は想像以上に尊大であった。
メイドのルイーゼが衣装部屋からアフタヌーンドレスを捧げ持ち、現れた。
「ありがとう、ルイーゼ」
ルイーゼはジュリアンの屋敷に勤めていたメイド頭だった。
日本人のジュリアンの母親にずっと仕えていて、日本を行き来していたこともあり、日本語も堪能だった。
新居に引っ越すに当たりジュリアンが
「シノブ、ユリコの為にルイーゼを連れて行くべきだ。
ルイーゼは明るくて気働きはするし、きっとユリコの力になるよ」
と親切に勧めてくれたのだ。
確かにルイーゼは優秀なメイドだった。
十代からジュリアンの母親に仕えていたこともあり、日本語は母国語のように達者だった。
言葉だけではなく、日本人のことを良く理解しているルイーゼはフランスに慣れない百合子に的確なアドバイスやサポートをしてくれた。
司のエコール・マテルネルの入園に当たっても一緒に学校に行き、面談の際に通訳をしてくれたおかげでスムーズに入園することも出来たのだ。
歳も百合子より数歳下と近いので、親しみも直ぐに湧き…百合子のパリでの生活の何よりの心強い味方であった。
「今日はどちらのドレスになさいますか?今日は少し暑いようですわ。奥様のお好きな麻入りのドレスになさいますか?」
と、日本で作られたらしい白地に青い小花が描かれたドレスを勧めてくれた。
…ドレスは全てジュリアンが手配してくれたものだ。
「それにするわ。ありがとう」
白いレースのキャミソールの上からコルセットの紐をきつく締め上げながら、ルイーゼはうっとりとしたように声を上げる。
「まあ…!奥様のウエストの細さといったら…!コルセットなど必要ないほどですわね。ジュリアン様のお母様も華奢な方ですが、それ以上ですわ。日本の女性は皆、こんなに細くていらっしゃるのかしら」
百合子は恥じらうように俯く。
百合子は使用人に裸に近い姿で世話をされることに慣れてはいない。
継母が来てからは百合子付きの女中は継母に奪われてしまったから、自分のことは自分でするようにしていたのだ。
だから本当は自分で支度をしたかったが、
「いけません!奥様は上流階級の奥様なのですよ。何しろ、ロッシュフォール侯爵家の次期当主様のご友人なのですから。
ご自分でお支度されるなんてとんでもないことです」
…ここ、パリではロッシュフォール家の威厳は想像以上に尊大であった。