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ポン・デ・ザール橋で逢いましょう
第2章 カルチェ・ラタン
…何を言っているのかしら…。
ジュリアンさんに、こんな…みっともない小さな悩みを告白するなんて…。
百合子は自己嫌悪から首を振り、俯いた。
「…こんなことは贅沢な悩みです。愛する子どもと愛する人と共に暮らせて…ジュリアンさんのお陰で何不自由ない暮らしができて…それで寂しいなんて…バチが当たります…。
すみません。忘れてください。私が今言ったことは…」
「いいじゃないか。ちっとも我儘なんかじゃないよ。
どんどん胸の内を吐き出してごらん」
ジュリアンが百合子の手を柔らかく握りしめた。
男性との接触に慣れていない百合子はびくりと肩を震わせた。
「おっと、ごめんごめん。百合子は本当に淑やかな大和撫子なんだな。
…百合子を見ていると、昔恋をしていたある日本女性を思い出すよ…」
手を離しながら、遠い眼差しをした。
「…日本の深窓のご令嬢でね…。まるでお伽話に出てくるお姫様みたいだった。とても美しく清らかでおとなしやかで引っ込み思案で…。僕の初恋だった…」
そしてやや切なそうに百合子を見つめた。
「…少し百合子に似ているよ…。だから君と初めて会った時、どきりとした」
「…ジュリアンさん…」
やや温度を持った蒼い瞳が百合子を切なげに見つめる。
百合子は一瞬、胸が甘く締め付けられ…そんな自分を戒めるようにぎこちなく俯いた。
ジュリアンはギャルソンが運んできたショコラを百合子に勧めながら空気を変えるように陽気に笑った。
「シノブが羨ましいよ。こんなに美しく素敵なレディを伴侶に出来て…。
でもシノブはとてもいい奴だし、僕も彼は大好きだ。
ツカサはもちろん可愛い。
…だから君達には幸せになってもらいたい。このフランスでね。
百合子、僕は君にはこのパリを好きになって欲しいんだ」
「ジュリアンさん…」
美しい蒼い瞳が優しく…励ますように百合子に微笑いかけた。
「僕が百合子にフランス語を教える。それからパリの街も案内するよ。百合子が一人でもどんどん色々なところにいけるようにね。
…閉じ籠るなんてもったいないよ。パリには美しいものや素晴らしいもの…それから数限りない可能性に満ちているんだから!」
百合子はジュリアンの真摯で情熱的な真心に触れ、心の中がじんわりと温かくなるのを感じた。
「…ありがとうございます、ジュリアンさん」
心を込めて礼を言うと、ジュリアンは嬉しそうに無邪気に笑った。
ジュリアンさんに、こんな…みっともない小さな悩みを告白するなんて…。
百合子は自己嫌悪から首を振り、俯いた。
「…こんなことは贅沢な悩みです。愛する子どもと愛する人と共に暮らせて…ジュリアンさんのお陰で何不自由ない暮らしができて…それで寂しいなんて…バチが当たります…。
すみません。忘れてください。私が今言ったことは…」
「いいじゃないか。ちっとも我儘なんかじゃないよ。
どんどん胸の内を吐き出してごらん」
ジュリアンが百合子の手を柔らかく握りしめた。
男性との接触に慣れていない百合子はびくりと肩を震わせた。
「おっと、ごめんごめん。百合子は本当に淑やかな大和撫子なんだな。
…百合子を見ていると、昔恋をしていたある日本女性を思い出すよ…」
手を離しながら、遠い眼差しをした。
「…日本の深窓のご令嬢でね…。まるでお伽話に出てくるお姫様みたいだった。とても美しく清らかでおとなしやかで引っ込み思案で…。僕の初恋だった…」
そしてやや切なそうに百合子を見つめた。
「…少し百合子に似ているよ…。だから君と初めて会った時、どきりとした」
「…ジュリアンさん…」
やや温度を持った蒼い瞳が百合子を切なげに見つめる。
百合子は一瞬、胸が甘く締め付けられ…そんな自分を戒めるようにぎこちなく俯いた。
ジュリアンはギャルソンが運んできたショコラを百合子に勧めながら空気を変えるように陽気に笑った。
「シノブが羨ましいよ。こんなに美しく素敵なレディを伴侶に出来て…。
でもシノブはとてもいい奴だし、僕も彼は大好きだ。
ツカサはもちろん可愛い。
…だから君達には幸せになってもらいたい。このフランスでね。
百合子、僕は君にはこのパリを好きになって欲しいんだ」
「ジュリアンさん…」
美しい蒼い瞳が優しく…励ますように百合子に微笑いかけた。
「僕が百合子にフランス語を教える。それからパリの街も案内するよ。百合子が一人でもどんどん色々なところにいけるようにね。
…閉じ籠るなんてもったいないよ。パリには美しいものや素晴らしいもの…それから数限りない可能性に満ちているんだから!」
百合子はジュリアンの真摯で情熱的な真心に触れ、心の中がじんわりと温かくなるのを感じた。
「…ありがとうございます、ジュリアンさん」
心を込めて礼を言うと、ジュリアンは嬉しそうに無邪気に笑った。