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愛のシンフォニー
第2章 美樹
「あたしたちは同棲してるし、もうすぐ結婚するんだから。あたしが仕事終わったから迎えに来てくれたのよ。変な言いがかりはやめてくれないかな」

美樹の迫力に警察官はたじろいでいたので、職務質問は簡単に終わった。警察官にもあまり関わりたくない人間はいるのだろう。

警察官は舌打ちをして、突然店に入って騒ぎを起こしたことを詫びるでもなくそそくさと出ていった。
確かに女子高生がいるようにとブツブツ言っていた。

姿がキャバ嬢みたいになっただけでなく、警察官も面倒くさがるような、本当に風俗の世界で生きているようなドスの効いた貫禄がある。徳造はますますこの美樹という女のコが分からなくなった。

「乾杯~」

とりあえず適当にお酒とつまみを買ってフードコートで乾杯をした。

「これ飲んだらとくちゃんの家に行こう。あっ、コンドームは買わなくていいからね。生がいいの」

と、またまた過激なことをあっけらかんと言う美樹に徳造は戸惑う。

「いや、これを飲んだら自分の家に帰りなさい。おウチの人も心配してるから」

と徳造はまたもありきたりな説教をしてしまう。が、今まではしゃいでいた美樹が突然涙ぐんだので、徳造はあたふたとしてしまう。

「・・ないの、あたしには帰る家なんてないの」
美樹は涙声で言ってすがるような目で徳造を見る。

「家出でもしたの?残念だけど僕には君の期待に答えられるようなおカネはないんだ」

徳造は美樹のことを家出をして男にすがって援助を求める神待ちの女のコだと思った。それならこんな可愛いコが自分なんかに近づいたのも合点がいく。

「違うの。あたしには家族なんていないし、帰る家もない。だから、一番大好きなとくちゃんと一緒にいたいの。神待ちなんかと一緒にしないで」

と美樹は泣きじゃくる。
徳造は狼狽えるが、あの全くやる気のない店員は再びSNSゲームに没頭してこちらの様子なんて全く気にしていないのが救いだった。他に客はいないし・・。

それにしても家族も家もないというのが本当なら美樹は今までどうやって暮らしていたのだろう?
さしずめ、どこぞの男と暮らしていて別れたか捨てられたのかと思ったけど、それは黙っていることにした。

こんな可愛いコが全く男を知らないなんてことはないな・・男・・男・・徳造の頭の中に最悪のシナリオが浮かんだ。

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