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愛のシンフォニー
第1章 素人童貞
徳造は何だか羨ましくてやり切れないキモチになった。

これから先、あのカップルはファーストキスをして、もっと愛情が深まれば初体験もして本物の恋人になっていくのだろう。

徳造はこれまでそんな普通の恋もしたことがないし、恋人もいたことがない。

さっきまで女社長にされていたみたいに、カネや欲にまみれて汚い関係を余儀なくされてきたが、普通の恋愛については全くの素人といっていい。

しばらく歩くと決して美男子とは言えない冴えない男の二人連れと擦れ違った。
独特の石鹸やシャンプーの匂いがしていることから風俗に行った帰りであろうことは分かる。

「やっぱり最高だな~」
「ああ、でも、またバイト代をつぎ込んじゃったな」

男たちは風俗での余韻に浸りながらも、少し冷静さを取り戻してバイト代をつぎ込んだことを後悔しているようである。

「結局、オレたちはまともにカノジョもなく、稼いだカネは風俗につぎ込んで生きていくしかないのかな」

「一生に一度でいいからカノジョ欲しいよ~、ちくしょ~」

「まあ、素人童貞同志頑張ろうぜ」

男二人はお互いを励まし合うように肩を組んで空元気を出して歩いて行った。

素人童貞・・風俗とかで玄人とは経験したことはあるが、ちゃんとしたカノジョがいたこともなく、普通の女のコとは全く未経験な男を言うのだが、徳造の耳にその言葉が痛切に残った。

ちゃんとしたカノジョもいたことなく、カネや欲にまみれて玄人女たちに弄ばれる自分にこそ素人童貞という言葉がよく当てはまると思った。

虚しい気持ちで歩いていると何だか頭が痛くて目が回るようになってきた。
度数の強い酒をガンガンに飲まされたあげく激しく腰を振ったりしたのだから酔いが回ってきたのだろう。

「うげげ~っ、おえ~っ」

徳造は込み上げてくるモノが抑えきれなくて畏れ多くも皇居のお堀に盛大に吐くはめになってしまったのだ。
アルコールの臭い、加齢臭、散々にいろんな男を食わえてきたであろう女性自身のイヤな臭いが甦ってきてますます吐き気を増大させる。

「大丈夫?汚いんだからもう、しっかりして」

吐いている時に天使のように美しい女のコの声がしたような気がして癒されたので、全部吐き出した後で周囲を見回してみたが誰もいなかった。

「空耳か、僕を励ましてくれる女のコなんているワケないよな・・」

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