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女王のレッスン
第3章 ■奉仕のセンセイ

緊縛だけしてればいいって訳じゃないんだ……
慄いて思わず手が止まる。瑛二さんが緊縛したその後で、その相手と……
想像だけで顔に熱が篭るのを感じ、狼狽して縄を滑らせる手を速めた。

「動揺し過ぎ。ライブでAV鑑賞みたいな感じでしょ。691でも見たりしない?」
「……そんな覗きみたいなこと」
「いい勉強になるよ。俺だって見てみたい」
「お前に見られると俺が落ち着かねえよ」
「私はいいわけ!?」
「お前なら責められてる方が恥ずかしがるだけだ。お前が見るべきは俺の奉仕と相手の願望だよ」
「うわぁぁなんか複雑……」
「心配すんな。興奮してもいいようにオナニー用のローターぐらいやるよ」
「はぁ!?」
「うぅわ、瑛二さんゲスい。引くわ」

瑛二さんが面白くなさそうに舌打ちすると、稜くんは鼻を鳴らして笑い、私は最早どういう顔をしていいかすらわからない。
恥ずかしさと怒りにも似たもどかしさが入り混じって唇を噛む。

「同行出来そうな依頼なんてあるんだ?」
「直近で今週の土曜の夕方だな。時間があるなら来い」
「早速……?」
「そいつは別に挿入希望じゃない。緊縛してお散歩に付き合うっていうのがお決まり」
「いい趣味だね」
「……その人的にはいいの?」
「『このことを知っている目がもっとあったらいいのに』って言っていた。一応聞いておくよ」

こんなにも早く、だけどついに触れることになる、人の隠された欲望。
緊縛してお散歩……縄を通して服を着て、外へ?
この服の中に、と、ふと自分の服を触ってしまった。どんな気分なのだろうかと。

「なんだ。お前もしてみるか?」
「いりませんっ」
「瑛二さんの身体が持たないから辞めときなよ」
「誰がやるか。プレイ目的以外で突っ込まねえっつの」
「でも抱くのは別なんでしょ?小狡いよね」
「ああ?」
「なぁに、瑛二くん声荒げちゃって」

結衣子さんが居間の方から姿を現し、ふたりとも口を噤んだ。
今度は普通にシフォンブラウスとスキニー。ベビーオイルと軍手を持って、私の隣に座り込む。

「ここのが布巾で毛羽取ってくれたやつ?」
「そうです」
「じゃあ私は仕上げていきましょうか」

そう言うと彼女は嵌めた軍手にベビーオイルを垂らして擦り込み、縄を扱いていった。
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