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女王のレッスン
第3章 ■奉仕のセンセイ


ひと通りの工程を終えて出来上がった縄を束ねていると、結衣子さんに呼ばれ、後に付いてキッチンに入った。
こちらも綺麗にリノベーションされて、しっかりと和洋風で快適そうな造り。天井も吹き抜けで開放感がある。
テーブルにはトレイに載ったグラスとフォークとお茶の入ったボトル。
結衣子さんは振り返って私の姿を一度上から下まで見た後、「やっぱ似合う」と微笑んだ。

「それ居間に持っていってくれる?注ぐのは彼らがしてくれるから」
「はい。おやつですか?」
「今日会った方から桃頂いたの。もう今年最後ねきっと」

結衣子さんの手にはつるりと湯剥きされた大きな白桃。甘い香りが鼻先に届いた。

「置いてまた来ます」
「ありがとう。お願いね」

トレイを持って居間へ行き、テーブルに置く。
ふたりは廊下で綺麗に艶の出た麻縄を慣れた手つきで束ねていた。
キッチンに戻ると結衣子さんは鼻歌混じりに桃を剥いていて、この空間もあってかなんだか家族みたいな情緒すら感じさせる。

「凄く広いですね、ここ」
「そうね、建物で150平米くらい。なかなか気に入ってるのよ」
「瑛二さんにアトリエだって聞きました」
「ええ。普段は撮影に貸したりして、週に一度は来てるわね」
「撮影って瑛二さんの?」
「他の写真家やSM愛好家も来たりするわ。吊床あるし梁も使えるし、庭や中庭で露出撮影とかも出来るから」
「う、うわぁ……なんか見応えありそう……」
「機会があったら来てみるといいわ。その内撮影に付き合うこともあるでしょうし」

最後の桃を剥き切って、4つのお皿にこんもりと桃が載った。
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