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女王のレッスン
第3章 ■奉仕のセンセイ
「……なんでわかるんだろ」
「基本的に人の機微に敏感なんだよ。実際女王としての彼女は責めもするけど癒やしもする」
「癒やし?女王様なのに?」
「結局欲望を許容するからね。それもあってか訳ありばっか拾うんだろうけど」
「ああ、そんなこと言ってた。稜くんも?」
考えなしについ口に出して、ハッとする。
でも稜くんは私を見遣ると薄く穏やかに笑い、「内緒」と告げた。
S心を持った人たちは、瞬間的に感情を揺さぶることが巧い、らしい。
ドキッとして焦る。
悟られないように人が増えてきた周囲を見渡した。その人波の中に見覚えのある顔。
「カナちゃん?」
名前を呼ぶと、暗がりでもわかるほど顔がパッと明るくなってこちらに来た上、左から抱きつかれた。
「わ!」
「ルカちゃん!」
相変わらずの天真爛漫ぷりを遠慮なく押し出してニコニコと笑う。
「カナ、カメラあるんだ気を付けて」
「だいじょぶだよ稜くん。久し振りだねルカちゃん」
「うん、久し振り……元気そうだねカナちゃん」
巻きついた腕をぽんぽんと叩くと、カナちゃんはちょっと離れ、小首を傾げた。
「どうしたの?」
「ううん。なんか雰囲気変わった?なんかあった?」
彼女も稜くんの言う所の人の機微に敏感なのかもしれない。
「……彼氏と別れて瑛二さんのアシスタントになり結衣子さんに着せ替えされて今ここ?」
「うわぁ、波乱万丈。カナなら倒れちゃう」
横で稜くんが吹き出す。肘でつつくと倍くらいの力で返されて思わず睨んだ。
「ルカ。Sになるなら見下ろすんだね。迫力ないよ」
その言葉通りに実行されて顔ごと逸らす。また息を漏らしたのが聞こえた。
でも言われてみれば確かに、波乱に満ちたひと月だった気がする。
そして振り回されながらも確実にそれに適応していってる自分がいて、それは私の中で着実な変化となっている。
「始まるね」