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女王のレッスン
第3章 ■奉仕のセンセイ
周りが一段と暗くなり、スポットライトが強くなる。
ざわめきの中、ステージの向こうから人の気配。
ハイヒールの脚とウェーブヘアが人影に横抱きにされて近付いてくる。
ステージの端、スポットライトの境界線。真っ赤なハイヒールが左、右と降り立った。
抱いていた人影は姿を見せず、網タイツに包まれた彼女の脚が高らかに靴音を鳴らして少しずつ全身を見せる。
チャイナドレス風の真っ赤なボンデージ。下ろされた左腕には、丸く束ねられた一本鞭。
中央に陣取った彼女は薄く開けた目を左手に向け、鞭の柄を右手に持つ。
まるで息吹を注ぐように左手からゆっくりと引いて優雅な曲線を描いてその腕を上げ、ひと振りステージに叩きつけた。
ひゅん、と風を切った刹那パシン!と乾いた音が響き渡り、ざわめきが一瞬で静まり返る。
静寂。ぎりぎりまで緊張を引き付け、皆息を飲み込むか潜めるか。身じろぎひとつ、誰もしない。
計算ずくのその様に満足そうに艶然と微笑し、彼女は観衆を睥睨する。
この場の絶対的な女王として君臨した瞬間だった。
息を吐ききった瞬間、もうひと振り。
身体が震えそうになるのを必死で抑えた。鳥肌で全身が粟立つ。
だけどその女王を、背後から猛禽類が襲った。羽交い締めにして首筋に歯を立てる。
女王は力をなくしたように膝から崩折れ鞭を取り落とし、あっという間に後手に縛り上げられた。
苦しげな表情をしたのは、一瞬。観念して項垂れる。彼はそれにうっすらと笑い、手にした縄で抱いていった。
「はっ……ぁ……」
彼女は既に頬を上気させ、背を反らして甘やかな吐息を漏らす。
しゅる、しゅる、と麻縄が擦れる音を立て、彼女の身体はボンデージに包まれていながら、丸裸の心を彩られていく。
胸を張り出され、羞恥に身震いし、それでも容赦なく自由を奪われていく。彼女の悦楽が解放されていく。
その中でも彼らは言葉ではなく、視線だけで会話をしているのが感じ取れた。
思わず両手を口に当てる。漏れていく息が熱くて、両隣に気付かれてしまいそうで。
「ん……っ」
「……結衣子」
熱い吐息混じりの低く、落ち着いた声。
頬に触れるその指先にまで愛情を込められたみたい。なぞって触れた唇が小さく「瑛二」と動く。
聞き間違い?見間違い?思ったけど、次の瞬間に胸を撫で上げられ、彼女は高い嬌声を上げた。