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女王のレッスン
第1章 ■最初のレッスン

今度は新たな縄が足されて胸の下に通る。何度も彼女を抱くから、本当に愛しているんじゃないかと思うほど。
背から首の脇を通って胸の下の縄をくぐり、また背に戻る。胸が綺麗に張り出して存在感を主張していた。
後ろで結ばれた縄が垂れ下がっていたフックに掛かる。
彼は彼女の耳元でまた何かを囁いたのか、彼女が小さく頷き、彼の支えを受けて立ち上がる。
そして彼は離れ、フックの先のワイヤーの持ち手をゆっくりと引いた。
たるみがなくなるに任せ、彼女がゆっくりと胸を張る。まるで開花だ。
これ以上ない程ピンと縄が張って、彼女の身体が完全に直立した。彼は持ち手を手近なフックに輪を掛け彼女に近付く。

「……カナ」

熱い吐息混じりの低い声。彼女がぴくりと反応すると、彼は彼女の顔を両手で包み優しく唇に口付けた。
彼の誘導で彼女は正面を向き、閉じていた目をうっすらと開けた。
上気した頬。潤んだ瞳。その表情はまさに恍惚としている。
なんて、綺麗なのだろう……。
両手で塞いだままの口から思わず溜息がこぼれた。

彼は最後に愛おしそうに彼女を背後から抱き締めて、胸に置いた手を時間を掛けながらお腹、腰、太腿と順に撫でる。

「はぁっ……」

今度は彼女から声が漏れた。
彼が彼女から離れると、スポットライトは彼女だけの物になる。
この異様な空間の中で彼女だけが照らされていた。だけどまだ終わらない。
戻ってきた彼はカメラを手に、彼女の撮影を始めた。
シャッター音とストロボにさえ、彼女の身体がぴくりと跳ねる。この瞬間すらも彼らにとってはショーの一部らしい。
満足気に笑って、彼はカメラを置き立ち上がると、吊っていた持ち手をフックから外して上に掛けたそれも取った。
一本ずつ丁寧に彼女に巻かれた縄が解かれていく。
解く時も抱き締めるように、結び目の一つ一つすらも慎重に。
そうして最後には眠りに落ちたお姫様を寝かせるかのように、ステージ上にそっと横たえる。
それを合図にしたようにスポットライトが消えた。
暗くなった視界の中で、私の頭は放心したように呆けていた。


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