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女王のレッスン
第4章 ■仕事のケンガク
「で、間もなく瑛二さんにも会って早速折られそうになった。それと対峙してた時間の分当然なんだけどそれでもね」
「なんで?稜くんだって緊縛出来たんでしょ?」
「全然違ったよ、俺のなんて児戯に等しかった。だけどそれでも選んだんだ。絶対に自分のものにしたいって」
どことなく気怠そうな雰囲気すら醸し出すのに、声だけは凄く熱っぽくて
穏やかな人だと勝手に思っていたけど、瑛二さんとはまた違う温度を感じた。
常に感じる訳じゃない、瞬間的な熱量。
身体を少しだけ彼の方へ乗り出す。自ら吐露することを躊躇わないその強さを感じられる気がした。
「自分に経験が少なくても人のを見れば補填出来る。技術を身に着けたら不安も払拭出来る」
言葉がうまく紡げない私に、稜くんは力強く言う。
最初に覚えた抵抗感なんてどこかに消えて、上目がちに彼を覗いた。
「……本当に?」
「俺はそうだったってだけだから約束は出来ないよ」
「だって、私、今でさえずっと当てられっぱなしで、ついてくのが必死なのに……」
「でも君はついて来てる。それすら出来ない人間がどれだけいると思う?」
「それすらって……」
「瑛二さんも、結衣子さんも、ここにくるまでに沢山の人間を見限って来てるんだよ。それだけで十分自信を持っていい」
励ましの連続に思わず訝しんで眉根を寄せる。
「……嘘」
「言うメリットがない」
「だって、あのふたりだよ」
「どんな聖人だと思ってるんだよ、神格化するな。彼らは個人事業主と経営者だ。人間を見る目はどこまでもシビアだよ」
そう言われて目から鱗が落ちる思いがした。弱音を吐いていたのに急に背中を叩かれたみたいだ。
彼らが見限ってきた人間がいるなんてこと、考えもしなかった。
笑みを覗かせて慈愛を語るあのふたりのイメージが強くて、来るもの拒まず、なのかと思い込んでいた。