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女王のレッスン
第4章 ■仕事のケンガク
かっと頬に熱が差して声を出すと、稜くんは立ち上がってくつくつ笑い「ごめんごめん」と口だけで言う。
「でもあれで結構ルカのことは気にしてる印象だけど」
「満くん?誰にでもそうでしょ?」
「基本はね。でも人間変わる瞬間て突然来るよ」
その時、カーテンがさっと開いて結衣子さんが姿を現した。ブランドショッパーを抱えている。
「あら、こんにちは遥香ちゃん」
「こんにちは結衣子さん」
いつもと変わらない様子で語りかけられ、いつもと変わらない様子で返した。
動揺するかと思ってたけど意外に平気で、つい先程までのことなど、全く匂わせない。お互いに。
「ごめんなさいね、連絡くれてた?」
「はい。今から行くと」
「そう、良かった」
彼女はささやかな嘘をついた私に笑いかけ、「ドアまで送るわ」と踵を返す。
稜くんがソファの向こうで手を挙げたから、小さく振った。
「ありがと。じゃね、稜くん」
「お散歩行ってらっしゃい」
結衣子さんを追って表へと歩みを進める。
「いよいよね。よく観察するといいわ。瑛二くんもクライアントも」
「そのつもりです。プレイ中って何か邪魔しちゃいけないとかあるものですか?」
「残念ながらわからない。流石にそういう仕事に関わったことはないから」
「ですよね……」
「困ったら聞いてみるといいわ。放り出す真似はしないから」
「そうします。来週から会社帰りにお店に来ますね」
入り口でショッパーを受け取り結衣子さんを向いた。
「そうね、楽しみにしてる。じゃあ瑛二くんによろしく」
「はい、また」
手を振って店を後にして駅へ向かう。
縄の束の上にはスカーフが掛かっていて、ちゃんと中が見えないようになっていた。