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女王のレッスン
第4章 ■仕事のケンガク
息を漏らして笑い、瑛二さんはモニタの正面から椅子を鳴らして横にずれた。
私がその正面に行くと、映っていたのは昨日のショーのステージ。瑛二さんと衣装姿の結衣子さんが立っている。全体に明るいから始まる前らしい。
再生ボタンが押され、画面の中のふたりが動き始めた。
『ねぇこのピンヒール、ステージはいいけどそっちのふわふわの上やっぱ歩けないわ』
『いいよ。抱いてってやる。ほら』
『まあ紳士的』
『ああ、それいいね。瑛二さんそのまま袖から歩いてきてみてよ。岩谷さんスポットに変えて』
『はいはい』
『稜、この辺からでいいか?』
『うん。スタート……そこで下ろして。で、結衣子さん歩く』
『どうだ?』
『ちょうどいい感じに脚からフェードインするね。見る?』
『ああ、見る』
『ん?』
『なんだあいつ。続けてるのか』
『みたいだね。速すぎて鞭の軌道がちゃんと映らないの惜しいなぁ』
『振る音も拾ってるか?』
『多分。合わせて見よう』
『いいぞユイ。一回上がって休んどけ。ヒールつらいだろ』
『全くよぉ。ステージでぐきってなったら目も当てられない』
『チェックと調整したら行くから裏行っとけ』
『はぁい』
なんだかおかしくて笑いを堪えていたら映像が一度切れ、瑛二さんを見る。
「こんなことしてたの?」
「ああ、で間もなくお前が来て録画一旦中止。で、この後ショー」
映像が飛んで本番が始まった。
また鮮烈に蘇るあの興奮と緊張感。
とても長く感じたのにたった数分の出来事で、泣いてしまったのはその短い時間で一気に揺さぶられたからなのかもしれない。
気付けばまた口をぽっかりと開けて見入ってしまっていた。
「なんだ。そんなに良かったか」
「……泣いた程度には」
「緊縛師冥利に尽きるね。時々いるよ、そういう人」
「やっぱり綺麗だった。このキスするとこ、蝶々みたいで」
「その意図が伝わったなら光栄だ」