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女王のレッスン
第4章 ■仕事のケンガク
「俺はホットコーヒー。チカは?」
「紅茶を……」
「じゃあ、注文よろしく」
言うと頬杖をついて細めた目で彼女を見つめる。
日常のちょっとしたことすら命令となり辱めになる。それは視線も例外じゃない。
普通にしてれば、愛おしそうに彼女を見る彼。
愛おしいのは当然だろう。自分が施した縄に彼女が感じているんだから。
チカさんは眉を少し顰めた後、首を回して店員を見つけ、手を挙げた。
「……聞こえた」
端的に言って、メニューに視線を落とす。
訪れた店員さんに彼女が先程の注文を告げ、離れた瞬間心底安堵した表情を浮かべた。
その彼女は私の方にも来て、カフェオレとチーズケーキを伝票に書き留め戻っていった。
「ありがとう。さて、チカ」
呼ばれた彼女が上げた顔にはまた緊張が走る。
「テーブルの下でスカートを捲り上げようか」
その緊張が私にも伝染した。まだ明るい屋外、店内も公園も人は多い。でもそんなの些事だと言わんばかりに、指示を出した。
距離を空けて横に陣取った私の位置からすらりと伸びた彼女の脚はよく見えた。
「そんな……」
「俺には見えないけど、向こうからは見えるねえ」
彼女は一度羞恥に大きく肩を竦め、大きく息を吐き出す。瑛二さんは気にも留めず、テーブルの下で靴を脱いでゆっくりと脚を組んだ。
チカさんが眉を寄せた後、瑛二さんと私の方から顔を背け、テーブルの下に両手を下ろす。
躊躇いがちにスカートの裾ににじり寄る指先。そっと掴んで、そろそろと身体の方へ引き寄せていった。
撮りたいな、という衝動が頭を過ぎる。傍観者だからなのかもしれないけど。
カメラの電源を入れて、テーブルに置いたまま少し傾けふたりが入るように。それから彼女のアップ。
「あんまり顔を逸らすな。俺達はデート中だ」