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女王のレッスン
第4章 ■仕事のケンガク

「それじゃ、今日はどうもありがとう」

シャワーを浴びて着替えた彼女が、玄関先で頭を下げる。

「こちらこそ。またいつでもどうぞ」
「ルカちゃんもありがとうね。いつもよりずっとドキドキしちゃった」
「いえ。私もドキドキしました。チカさん、綺麗でした」
「嬉しい。それじゃまたね」
「ああ。気を付けて」

最後には手まで振って、明るく去っていった。
ドアと鍵が締められて漏らした溜息に瑛二さんが振り向き、「お疲れ」と労われる。

「お疲れさまでした。ごちそうになっちゃった」
「気にするな。こんな感じだ取り敢えずは。何か質問は?」
「つらかったら『無理』って言うのは?」
「あれはセーフワード」
「セーフワード?」
「緊縛もSMも危険が付き物だ。本人の意志を無視して続けることは出来ない。でも『イヤ』とか『ダメ』は自分の気分を盛り上げるのにも使う。だからあまり使わない言葉を設定して合言葉みたいにするんだ。それを言われたらどんな責めも一旦中止」
「そうなんだ……細心の注意を払っていても?」
「絶対安全な緊縛なんて存在しない。縛る側が相手を支配しなきゃいけない理由はそこにもある。相手の信頼を得て、支配し、全責任を負う。縛られる側から、こいつにならもし何か危険を与えられても大丈夫だって思わせるだけのな」

説明を聞きながら廊下を過ぎて室内へ入った。あのふたりが言っていた意味も理解する。

「あ、写真見ていいか?」
「うん。うまく撮れてるかわかんないよ」
「いいよ」

瑛二さんはデスクへ向かい、私はバッグの中のカメラを取り出してそっちへ持っていく。
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