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女王のレッスン
第4章 ■仕事のケンガク
「いつまで下を向いているのかしら」
予想通り。鏡の中の彼に向かってぴしゃりと言い放つと、彼の身体がまた跳ねた。
頭が上がりそうで、でも上がらない。つらそうだ。こないだのチカさんを彷彿とさせる、ヒリヒリするこの感じ。
沈黙が流れる。彼女は待ってる。きっと呼吸を読みながら。
鞭を持つ右手がゆっくりと動いた。振り上げたと思ったら先端についた四角い部分が彼のお尻を打って、乾いた音が響き渡った。
呻くような声が聞こえ、また身体が跳ねる。
「……座り心地の悪い椅子だこと」
「も……申し訳……」
「顔を上げられないのなら」
言葉を切って、乗馬鞭の先端をお尻になぞらせた。
また身体が震えて彼女の顔が険しくなり、勿体つけた後にもう一度。
「ひっ……」
「見なさい」
首輪の鎖を引くとまた声にならない声で呻く。だけどまだ顔を上げない。
鞭打たれたくて、そうしてる?見たいけど見れない?それとも他の責めを求めてる?
たくさんの矛盾。見えるよう。でもこの状態は確実に彼は興奮を覚えている。
「躾のなってない子」
今度は髪。鞭を持ったまま掴み上げて、無理矢理顔を上げさせた。
『子』なんて使う年齢じゃないのは明らか。だけど浮かべているのはそんなのもどうでもよくなるくらいの恍惚の表情。
鏡越しに彼を睥睨して、彼女は鎖を短く持つ。上げた顔は下げられない。
「見えてるかしら、自分の無様ではしたない姿……」
鞭の先が彼の頬に当てられた。
「どう?今の気持ちを教えて頂戴」
「っは……」
「言えないの?」
先がぴたぴたと頬を叩く。その頬に伝っているのは涙。
それほどまで昂揚させておきながら、まだ彼女はその手を緩めない。