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女王のレッスン
第4章 ■仕事のケンガク
「恥ず、か、しい、です……」
「そうよね。でも嬉しいんでしょう?」
「……はい」
「なら、もうおしまい」
「……っ!」
彼女はそう言って、組んだ足を綺麗に揃えた後、彼の背から降り立った。
「どうして……」
「これじゃお仕置きにならないもの」
ゆっくりと歩いて彼の正面へ。そして、慈愛を込めた蔑みの目で見下ろした後、彼の肩を押して膝立ちにさせた。
彼女が鞭で顎を持ち上げると、彼の視線は一直線。自分を支配した女王の元へ。
「どうやったら私を喜ばせられるか、次までに考えていらっしゃい」
この場を容赦なく突き放しておきながら、次の機会を与える。
彼は暫く彼女を見上げてから、その頭を床に擦り付けるまで下げた。
「このハイヒールにキスがしたい?」
「はい」
「許すわ。一度だけ」
身体を大きく打ち震わせて彼は彼女の靴先に唇を寄せる。消え入りそうな声で、「ありがとうございます」と言ったのが聞こえた。
彼女はそれを満足そうに見て笑みをこぼし、鎖を引いて彼を立たせ、ソファの方へ消えていった。
ふたりが去った後も呆然としてしまい、緊縛ショーを見た後のような余韻があった。
あの鏡の辺りだけ別世界だったみたいだ。鏡には私も稜くんも映っていたはずなのに、彼にはまるで見えていなかった。
自己投影をした訳じゃないけど、少し頬が熱い。
ぼんやりとふたりのいた場所を見ていたら、稜くんがまたカウンターから出てカーテンを閉めに行く。
プレイの幕引き。それを見て、思い出したように目の前のグラスに口を付けた。