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女王のレッスン
第4章 ■仕事のケンガク
「夢中で見てたね、君」
戻ってきた稜くんに言われて素直に頷く。
結衣子さんにもだけど、あの彼だってそうだ。女王様に支配されて、全て委ねて。
ああも自分に服従されたら、確かに芽生えるものがあるかもしれない。
「稜くんは、あんな風に服従されたことあるの?」
「なくはない。ノリ次第だったりするけど」
「どういうこと考えながらする?」
「常に先読みするようにはしてるよ。その時欲しそうな言葉、態度、行為、全部ね」
「やっぱ、そうなんだ……」
「何?」
「お散歩の時も今も、相手のしたがってることをふたりともしてるように見えたし、稜くんのそれもそうだったのかな、って」
「自分勝手してるように見えたなら心外だな」
「違うよ、むしろ愛情を感じたよ。みんなそう。その時限りでも、目一杯注ぐんだね」
確認したくて稜くんを見る。だけど曖昧な笑みを浮かべて、「ちょっとごめん」と裏へ行った。
なんだろう。首を傾げていると、ふたり分の足音が向こうから聞こえて来て、さっきの彼の荷物を取りに行ったことを悟る。
戻ったその手には高級そうなビジネスバッグ。巻かれたタグを鋏で切った所でL字の向こうから姿が見えた。
さっきまでの姿なんて嘘のような、貫禄のある出で立ち。だけど結衣子さんを見る目はとろんとしてた。みんなギャップを抱えてる。
会計と見送りを済ませて店内に帰ってきたふたりは、ドア前で軽く立ち話をしてからカウンターに戻ってきた。
「お疲れさま、遥香ちゃん」
私の隣に結衣子さんが座り、にこやかに笑う。
「結衣子さんこそ、お疲れさまです」
「どうだった?お散歩は」
「先にそっちですか?」
「ええ。稜くんとも聞きたいって言ってたの。瑛二くんは依頼の話はあまりしないし、しても提供側目線でしか語れないから」