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女王のレッスン
第5章 ■努力のタマモノ
彼らとの別れはなんとも和やかであっさりとしたものだった。
ホテルのドア先でふたり揃って笑顔で見送られ、そういうものだと思い込む。
イカされた直後こそ羞恥心や若干の嫌悪感があったものの、なんとなく割り切れていることにも驚いた。
ふたりきりのエレベータ、存外緊張もしていない。
「お前結構柔軟だな。手先だけじゃなく中身も器用なのか。遊び人の素質あるぞ」
「知らないし。っつーかこんなの知らなかったし……」
「そうか、知れてよかったな。惰性でやったって何ひとつ面白いことなんかない」
駐車場階に着き、瑛二さんの後について降りる。
その理屈はよくわかった。でも現状惰性でしていること、多分たくさんある。
無理もない、考え始めたのはごく最近だ。仕事、生活、セックス、フェティシズム、緊縛、普通、普通じゃない。
考えてもわからなかったのは、さっきの世界の作り方。
「瑛二さん」
「ん?」
「見てたけど、やっぱわからなかった。なんで彼女あんなすぐに入ってったの?」
「そうだなぁ……気迫とか真剣さは息遣いと肌で伝染するからそれ。あとは相手の元々のマゾっ気と期待値の高さと経験上と色々あるな」
「まず自分から出して相手を受け入れろってことね」
「当然。あと不安を受け入れて貰えるか、とかもあると思うけど」
「不安?」
「『こんな私でも受け入れてくれるの?』ってやつ」
「みんなそう?」
「一概には言えないけど多い。マゾ性を秘めてることを思い詰めると尚更な」
「ああ……そこは持ってないなぁ」
車のドアを開けてそれぞれ乗り込んだ。座るとやっぱりちょっと下着がまだ気持ち悪い。
「明確な感情の推移は俺にもわからない。委ねられたと感じたらそれで」
「曖昧過ぎるよ……もうちょっと言語化出来ないもの?今までどうやって教えてきたの?」
「大体がそっちの世界に携わってた人間達だからお前の方が特殊なんだよ。一般人でここまで続いたの初めてだ」
「……そうですか」
「ユイは元々引力強い奴だし、稜は真綿で首締めるタイプで素地があったしな」
「え?稜くんにも教えたの?」
「店のオープン前後に。しかし言語化ねぇ……」