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女王のレッスン
第5章 ■努力のタマモノ
「実況してあげる。縛りなさいな、緊縛師さん」
「おい」
「でもその前にちょっとだけ、私の昔話をしてもいい?」
「だから、そこまでしなくても」
「いいの。こういう人間もいるってわかるでしょう。『縛って』って言ったら縛り始めてね、瑛二くん」
言って彼女の目は寂しげに伏せられ、息を吸った。
「ありがちな話だけどね、アニメやヒーロー物でヒロインが攫われて囚われるシーンがあるでしょう。それにとてもドキドキしていたの。可愛いものに出会った時とか誕生日を祝って貰う時とも全然違う、別のドキドキ感。自分もされてみたいって。それを味わった後に自然と自分の股間に手が伸びて、触っていたら全身がビリビリする感覚があった。4つか5つの頃よ」
ふふ、と息を漏らして結衣子さんは笑う。
幼少時に、オナニーを覚えていたってこと?私精々12歳くらいだったような。驚いていると、瑛二さんが着ていたシャツを脱いで彼女の肩に掛けた。
「……風邪ひくぞ」
「優しいのね」
私の脚を隠してくれていたものは、彼女を守るそれに変わる。
「それらがどういう意味か知ったのは10歳頃だけど、性的知識と嗜好は幼少時に身に付けてしまったのね。だから早くセックスしてみたくて15の時、初めての彼と、期待いっぱいでしたの。でも全然違った。望みは何一つ果たされなかった」
その時の感情ごと思い出すように語る結衣子さんにつられるように、自分の表情が変化してくのがわかる。
寂しいし、哀しい。
「初めてなせい?って思って何度もしても違う。でも言い出せないのね、『縛って、虐めて、辱めて』って言うのが怖くて。軽蔑されるんじゃないかって。だからあらゆる形で相手を何人か変えたけど違う。両腕をベッドに押し付けられると少しドキドキしたけど決定的じゃない。すればするだけ渇いていくの。世界がどんどんモノクロに見えてくみたいだった」
次第に濃くなるのは絶望。
思わず眉根が寄り、気付けば彼女の世界に引き込まれていった。