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女王のレッスン
第5章 ■努力のタマモノ
救いを見出したように結衣子さんが顔を上げ、シャツを肩から落とした。
抱えていた膝を横に流し、両腕で胸を掻き抱く。
「最初は不安、緊張、それから恐怖。初めて会ったこの人に、私の渇望を受け入れて貰えるかわからないから。でも期待もしてる。だってこの人は、両腕以外でも私を抱こうとしているのだもの」
瑛二さんがまた応えて、結衣子さんを後ろから抱き締めた。
「だけど彼から戸惑いも流れてくる。思った以上に根が深いと。こうするしかなかったでしょうね、10分近く抱き締められてた気がするわ」
「……こうするしかなかったね。でも不思議と迷いはなかった。見放すことは出来ないと」
「それを感じただけでも嬉しかったの。だから、頑なだった腕の力を、抜いた」
言葉のまま、結衣子さんが腕を解いてだらりとさせる。
「胸を開くとどんな望みも隠せなくなるから不思議ね。もうどうにでもなればいいって自棄もある。でも受け入れてくれるかもって希望が見えた。駄目だったら罵倒してやるって敵意もあった。そこで漸く、言えたの。『縛って』」
先刻告げられた宣言通り、瑛二さんは抱き締めていた手を解き、縄を手にして結衣子さんを後手に縛る。
「やっと叶う。やっと満たされる。だけどまだ恐怖。知られてしまうのが怖い。15年以上ずっと憧れて秘めてきたものを初めて見せるのだからね。でも隠せる手は縛られてしまった」
左上腕から胸へ。右上腕を通ってもう一周。背中で纏められた。
結衣子さんの頬が上気してほんのりと桃色に染まる。足し縄がされ、抱く縄が増える。
「恥ずかしくて、だけど隠せないという理由があるからそれで救われた。こうやって気付いて見てくれる人がいる。初めて安心感が持てて、委ねてもいいかも、と思えた瞬間に」
上下で胸が縄に挟まれ、綺麗に張り出した。
「自分が感じていることに気が付いた」
瞳に浮かぶ恍惚。
だけど結衣子さんは微笑みを絶やさない。
「縛られているだけ。苦痛も快感も与えられた訳じゃない。自分が怖いのに止まらないの。縛られてるのにどんどん心酔して乱されて解放されて自由になる。『もっと縛って』」