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女王のレッスン
第5章 ■努力のタマモノ
「……面白くないな」
隣で小さく呟かれたそれが、何に対してなのかわからずまた見ると、今度は視線がかち合った。
「どういう意味?」
「いや、独り言」
ふう、と息を吐いて稜くんは姿勢を正し、口を開いた。
「……驚いた?」
「うん。知ってたの?結衣子さんの」
「寝物語程度にね。ここまで深く聞いたのは初めてだけど」
「軽い気持ちで言ったのが申し訳なくなるよ。聞いてよかったのかな……」
「言える程度ではあるってことでしょ。心配いらないよ。瑛二さんもいるし」
そうは言っても、とついカーテンの方を見てしまう。
今向こうで起こっていることは想像つくし、気を揉んだって仕方ないことでもある。
マゾヒストの背後にある色んな感情。深くて痛くて、全部受け入れて抱き締めないと彼らは癒やされることはない。
「安心しなよ。彼女のそれは多分少し特殊だ。でも踏まえておけば余程でない限り下手な真似はしないで済むと思う」
「そう?みんなこうじゃない?」
「俺がこれまで相手してきたのはもっとライトなのが大半だから」
「そっか……。こういうの知ってたら世界の作り方って変わる?」
「変わるだろうね。俺も多分、変えると思う」
それは、緊縛そのものの事なのか、或いは結衣子さんへの接し方、なのか。
思ったけど、真剣な表情に臆してそれを聞くことは出来なかった。
「……お礼、言わなきゃ」
始まりに過ぎない彼女の物語を、身体を晒してまで教えてくれたことに。
まだ少し夢心地。だから彼女は、他人をより深く内包するのかと納得する。
「ルカは本当に真っ直ぐだね。羨ましくなる」
「何その自分は斜めってるみたいな」
「斜めどころかぐっちゃぐちゃだよ」
「ソリッドなのに?」
「ソリッドなりに?」