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女王のレッスン
第5章 ■努力のタマモノ

「新しい男の趣味?」
「違うよいないよ」
「あとなんか大人びたっていうか、凛々しい?みたいな?」
「そう、なの?」
「うーん、なんとなくね。仕事奮わないけど」
「もー。ひと言多い」

半笑いで返すと、真緒は今度は好き勝手に自分や周りの話を始めた。
仕事の愚痴に始まって、ちょっと前にした合コンで友人の女の子が数回のセックスの末に捨てられた、とかまで。

「酷いよねー、結局ヤリ捨てとかさぁ」

口を尖らせる彼女を見ながら、本当にそれは酷いの?と考えてしまう。

「同意の上で、したんでしょ?その子ちゃんと言ったの?付き合いたいとかそういうの」
「えー?だって普通わかるでしょ。それにそういうの男から言えよって思わない?」

そうだろうか。そこに自分の望みがあるなら言わないと伝わらないし、伝えないのならその結果は彼女の落ち度、なんじゃ。

「それは怠慢、っていうか傲慢かなって思うよ。いいようにされるならされるだけの理由があるんじゃないかな」

至って冷静に言い切ると、真緒はキョトンとした顔で私を見た。

「……そんなんだったっけ、遥香」
「……ちょっとした心境の変化はあったかも」
「最近帰りも早いよね。やっぱ新しい恋……」
「だから違うって、ただこの頃習い事?っていうか」
「習い事?なになに?」
「えっ、いや、き……」

言い掛けて口を噤む。緊縛習ってるなんて言える訳がない。
頭の中でなんとか言葉を捻り出して、「着付け、着物の」と告げると、真緒は興味なさげに「なあんだ」と言った。

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