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女王のレッスン
第5章 ■努力のタマモノ

意表を突かれてドキッとする。飄々としているくせに、誰よりも人を見てる。

「……なんで?」
「女の子を口説く時に一番効くよね。弱ってる時に気付く、っていうのは」
「うわ、尊敬しかけたのに台無し」
「俺にとっては大事な能力なんだよ。姉と妹に挟まれてたから」
「ああー納得。私三姉妹の末っ子」
「それも納得。ちなみに瑛二さんは一番上で結衣子さん一人っ子ね。わかりやすいと思うけど」
「あははっ!凄いわかる。それっぽい」

声を上げて笑うと、稜くんもふっと微笑んだ。こういう感じはちょっと弱い。
笑いに溜息を混ぜ込んで、「仕事がね」と軽い調子で話すのを稜くんはじっと聞いてくれた。

「辞めたいとか思うの?」
「思う、ってかちょっと思ってる。結局毎日惰性でやってて、やりがいってなんだろーってなる」
「わかるけどね、あっさり手放さない方がいいものだとは思う。辞めてフリーになった人間が言っても説得力ないけど」
「確かに」

また笑ってるとお客さんの見送りと会計に結衣子さんがこっちに来て、稜くんもそれに対応する。
こういう仕事も大変だろうなと思いながら、今の仕事と比較したりしてまた頭の中がややこしくなる。
その内ふたりが戻ってきて、結衣子さんが隣に座った。「聞いちゃった」なんて微笑まれた。

「私も最初は昼職してたからわかるなぁって。3年目で女王様と掛け持ちして一本にしたのは4年目、で、28でここ」
「なんかもう凄いとしか言えないです。私そこまで考えられない」
「上客に恵まれたのが一番大きかったわ。先立つものがないと結局何も出来ないから。だから私も今そのお仕事を手放すのは賛成出来ない。もしもするなら長期休暇ね」

一気に突き付けられる現実。そりゃそうだ。本当に辞めようとしたらそれなりに労力がかかる。
その上次の仕事、生活、他色々。全部考えないといけない。

「それでもどうしても辞めたいってなったら好きになさい。いざとなったら私が雇うから」

ぽん、と私の背中に手を当てて、結衣子さんは颯爽とスツールから下り奥へと戻っていった。
その潔さに羨ましくなる。瑛二さんだってそうだ。でも、比べてもしょうがないことを稜くんが教えてくれた。

「……ありがと」
「お安い御用」

L字の向こうの嬌声を心地よく聞きながら、グラスを傾ける。
来た時より幾分穏やかな心持ちになって、私は店を後にした。
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