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女王のレッスン
第5章 ■努力のタマモノ
はあ、と息を吐いて窓の向こうを見る。外はもうだいぶ暗くなり始めている。
「ああいう所で単独女の料金がタダなのは単独男が多いからだ。カップルで単独男の半額だろ、でも女が入れば3Pでもいい。男と違って無尽蔵だからな、今日のナミみたいに」
「やらしい言い方」
「事実だよ。ミツなら喜ぶぞ」
なんとなく腑に落ちない気もしたけど、悪くはない、とも思った。単独でなくてカップル。
「ちょっと電話してみる」
スマホを出して満くんの電話を呼び出す。隣から「スピーカーにしろ」と言われてそれも押した。
「遥香ちゃん?久し振り!」
「久し振り、満くん、今いい?ってかこの後予定ある?」
「んー、あるっちゃあるよ、691に」
「単独?」
「そうそう。何?俺に会いたくなった?」
「お前便利だけどそのノリほんと時々うぜえな」
「えっ、瑛二さん?一緒なんだ?」
「一緒。ねえ満くん、単独じゃなくて私とカップルで入らない?」
一瞬の間の後、「面白いこと言うね」と返ってくる。
「じゃあビルの前で待ってるよ遥香ちゃん。瑛二さんは来ないよね?」
「誰が行くか。俺のアシスタントしっかり守れよ」
「へ?アシスタント?瑛二さんそれ」
「じゃあな」
「あ」
瑛二さんは私の手の上のそれの終話ボタンを勝手に押して電話を切った。
無情な電子音が車内に響く。
「……時間決めてないのに」
「平気だろ」
私を『守れ』だなんて、それこそ『面白いこと言う』なんだけど。