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女王のレッスン
第5章 ■努力のタマモノ
「いいよ。してみる」
「ノリいいねぇ。それなら新規カップルを狙おっか。なるべく真面目そうな感じの」
「なんで?」
「少なくとも、遥香ちゃんに嫌な想いはさせないはず。あ、名前は?今日はルカちゃんにしとく?」
「うん。満くんは?」
「元々アソビ用の偽名。本当は満る夜って書いて満夜。これ内緒ね、付き合い長い瑛二さんたちは知ってるけど」
唇に人差し指を当ててウインクされる。なるほど、さすが遊び人。瞬きひとつで頷いて私も周囲を見渡した。
今いるカップルは3組、その中で新規はさっき説明を受けてた1組だけ。プレイルーム側のテーブル席に座ってる。
「決まりかな、ナンパしようか。遥香ちゃんが女性に声を掛けるといいよ」
「私?満くんじゃないの?」
「女の子の方が警戒されにくいから」
「わかった、言ってみる」
グラス片手に満くんを連れ立ってテーブル席に向かう。とても仲良さげなカップルを前に湧き上がる、『何故彼らはここに』という疑問符。
頭の片隅に追いやっていたら彼女の方が私の視線に気が付いて、私は「こ、こんばんは」と軽く吃り気味の上擦った声で声を掛けた。
「こんばんは」
ミディアムヘアをくるりと巻いた、猫のような目の可愛い人。屈託ない笑みを返されて安堵し満くんを振り返る。
男性の方は爽やかな男前でとても真面目そう。「おふたりとも座りますか?」と投げ出していた脚をすっと正した。
「いいですか?ぜひ。新規カップルが来たなって思ってたんです。で、彼女に声を掛けて貰って」
「そう、嬉しいな。私達もカップル目当てだったの」
互いに名乗る。34歳のコウさんと31歳のアヤさん。偶然にも瑛二さんたちと同じ年齢差のふたり。
左手薬指には個性的なお揃いのリング。4年の交際の末去年結婚し、今日は彼女がここに誘ったらしい。『何故』が止まらなくて堪らず尋ねた。そこに至った理由を。
「私ね、彼のセックスを客観的に見てみたいの」
そう言って彼女はグロスでつやつやとした唇を小悪魔的に笑わせる。
こんな所にもいるらしい、ちょっと変わった趣向の持ち主が。