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女王のレッスン
第5章 ■努力のタマモノ
「私は彼が私以外の人間にどうやって奉仕するのか本当に見たかったの。そういう彼を見てるっていう状況にも酔ってた。笑いってとても凶暴な感情表現ね、不快だったらごめん。あとキスしたり色々も」
「いえ、それは別に……」
ふふふ、とアヤさんが笑い、すぐに目を軽く伏せて「共感出来ないと思うけどね」と続ける。
「端的に言えば『あなたのセックスは退屈だ』ってことになる。でも夫婦間でそうは言えないでしょ。色々提案もしたし盛り上げようとコスチューム着たり好みのAV見せたりもしたけど一時的でまたルーティン。この先何年何十年それなんて私は耐えられない」
「それでスワップに?」
「必要としてたのは彼が自分のセックスについて思考せざるを得ない状況。目の前の妻が他の男のテクニックで普通に感じて楽しんでいたら、変わらない訳にいかないはずだと。だから色々模索してる」
確かに共感は出来なかったけど、理屈だけはわかった。
彼をなるべく傷付けないように我を通す。随分荒っぽいやり方だけど、自分たちのセックスについて考えるひとつのきっかけにはなるのかもしれない。
「でも実は、他の人と私がしてみたかっただけなんだよね」
ぺろ、と彼女は舌を出してさらりとぶっちゃけた。
開き直り、半端ない。思わず目を瞬いて二度見してしまう。
「……それは、寂しいからとかじゃなくて?」
「寂しかったら彼がいるのに?そんな綺麗な理由で纏めるのは怠慢だし滑稽かな。ただの衝動に過ぎないよ」
「衝動、ですか」
「そう。理由なんてなんでもいいの。バーで隣に座った人の声が好みだった。同僚の何気ない仕草に色気を感じた。どうしようもなく心を衝き動かされたなら、私は従う」
言葉とは裏腹に、彼女は向かいの夫を愛おしげに見ていて、「今となっては出来ないけどね」と自嘲気味に笑う。
自分で考えなきゃいけないと思っていたのに、思い掛けずひとつ答えを貰ってしまった。
『寂しい』なんて理由は、怠慢で滑稽。
「どうだった?彼とのセックス」
「……気持ちよかったです。とても優しくて」
「それならよかった。私の我儘に付き合って貰うのに気持ちよくもなかったら申し訳なくなっちゃう」
「アヤさんは?実際他の人としてみて」