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女王のレッスン
第6章 ■孤高のキンバク
「どうして自分だけだと思うの?」
「どうしてって……」
「遥香ちゃんは自分だけが悪いみたいに言うけど、俺が何ひとつ悪くないなんてことないからね」
「そんなこと――」
「あるよ。危機感がありながら何も出来なかったんだ」
「でも酷いやり方で放り出したんだよ?」
「確かにキツかったけど、無理もない。俺は自分の願望をあれ以上何も言えなかったから」
軽く目を伏せて柊平は首を横に振った。
先日の結衣子さんの話を思い出す。誰にも言えずに傷付いていったことを彼女は自身の勝手だったと言ったけど。
乾いた空気を思い切り吸い込んだ。自分の無力感に打ちひしがれる前に。
「俺こそごめん。どう言っていいかもわからなかった。そのせいで遥香ちゃんに背負わせちゃったね」
柊平は私の左肩にぽん、と手を置く。まるで自分が背負わせたと思うそれを落とすように。
今度は私が首を横に振った。
こんなに想われていたことが申し訳なくも思うし、それでもやっぱり嬉しいとも思う。
「……ありがとう。好きだったって言ってくれて」
過去にしてくれたから
「私も柊平のこと大好きだった」
私も過去に出来る。
「……うん。ありがとう」
晴れやかに笑うその顔に、つられて笑顔になった。
ひとつの恋が漸く終わる。空の高さに眩しさを覚える清々しい秋の日だった。