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女王のレッスン
第6章 ■孤高のキンバク
「ユイ、離れて。稜、目線下」
「本当にさあ……」
「不機嫌そうなのも悪くないねぇ、色男」
「ウッザ。男も撮る趣味あったんだ」
「縛る趣味はないが撮るなら別だよ、お前も絡みで何度か撮ったろ。流し目でこっち」
文句を言いながらも稜くんは瑛二さんのそれに従う。
カメラのモニタに写る彼は被写体として綺麗に切り取られていて、流石フォトグラファー、と素直に尊敬した。
「いいわね、緊縛男子?抑制されてる感じが堪らない」
「なんでも男子付けりゃいいってもんじゃないでしょ」
「いい仕事したな稜。新たな萌えになるかもしれない。HPにも載せとくか?」
「勘違いのエゴサド女子が増えても迷惑だよ。撮ったなら解いて下さい結衣子さん」
「はいはい」
稜くんの縄が解かれていくのを横目に、中途半端な飾り縄のままの瑛二さんの足を再び取るも、彼の目は今撮った写真の中。
勝手に進めてしまうぞ、と手を動かす。
「シューヘーくんもお前も解放されたんだな」
手元と足先を交互に見ながら瑛二さんは静かに言った。
「……まあ、そうなるかな。縛ってないけど」
「人との繋がりは気付くと縄みたいになってたりすんだろ。それを解くのもひとつの勇気だ」
「それも経験上?」
「色々だね。SMにハマる奴は闇が深いことが多いせいか、切り方間違えるとメンヘラ化したり」
カメラを床に置いた瞬間彼から漏れ聴こえた息。経験上らしい。縄尻を処理して思わず振り向いた。
「あるんだ」
「あるよ。お前も気を付けろ」
「私瑛二さんみたいに曖昧じゃないもん」
「ならいいけど。出来たか?」
「うん。チェックお願いします」
「ここ閂ない方がいいな、別の場所が締まる。それと取りにくいかもしれないがもう少しテンション。あとはさっき言った間隔の調整とその先はイマジネーションの問題だな」
「閂入れる基準は?」
「負荷次第で変わる。飾り縄なら荷重はないし見た目の感覚だから最早場数」
「そうなるよね……写真だけ撮らせて」
「ご自由に」
スマホを構えて写真を撮る。角度を変えてもう一枚。
隣にいたふたりが手を振ってその場から離れ、ステージにいるのは私達だけになった。