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女王のレッスン
第6章 ■孤高のキンバク
「……あれから2か月経つのか」
「柊平のこと?」
「っつーかお前がうちに来て宣言した時のこと」
頷いてスマホをポケットにしまい、解き始めた。
「どうだった?この2か月」
「男も女もみんな色んな欲望を抱えて生きているんだなぁと。瑛二さんの依頼人も、691に来る人も」
「ああ、あの日結局スワップしたのか?」
「新婚夫婦とね」
内容をさらりと話しながら飾り縄を解き切り纏める。
瑛二さんは私の語るその夫婦のことを興味深げに聞き、
「思考を止めるなって言われた理由がやっとわかったよ。従うべき感情や衝動の判断を出来るようにするためなんだね」
私が辿り着いたその答えに、愉快そうに笑った。
「この先も衝動を感じることがあったら、飛び込んでみるといい」
「傷付いても?」
「それも含めて糧だ。見てきただろ。迷う暇なんかないぞ、その局面に来た時は」
鋭い眼差しを向けながら、瑛二さんは穏やかに私を諭す。
視線を受け止め交えると、目の前の猛禽類はふと真顔になり、
「っ……!」
私の顎を急に掴んだ。
少女漫画ならキスでもされると思う所なんだろうけど、この男がそんな真似をするとは思えない。
「……なに?」
跳ねた鼓動を押し隠して、努めて冷静に意図を問う。
「今、世界を創り支配してみる気はあるか?前嶋遥香」