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女王のレッスン
第6章 ■孤高のキンバク
「……よかった」
「遥香ちゃんはカナちゃんと話し終えたら出ていらっしゃい。カナちゃんはそのまま帰ってもいいし」
「はい。あの、瑛二さんはまだ帰らないですよね?」
「もし帰ろうとしたら引き止めるから安心して」
力強く言って貰えて胸を撫で下ろすと、今度はキッチンの方から靴音がしてそちらを向いた。
稜くんがトレイにマグカップを2つ載せて持って来てくれたらしい。結衣子さんがそちらに歩み寄る。
「あら、ココア?」
「はい」
「稜くんのココア美味しいの。ちょっとブランデーが入っててね」
「そんな欲しそうな顔しなくてもあっちに結衣子さんの分ありますよ」
「さすがね嬉しい、ありがとう。じゃあふたりともゆっくりしてて」
軽やかに手を振ったかと思えばカツカツと忙しない靴音を立て彼女は店内へ向かい、稜くんはトレイをそのままテーブルに置いた。
「ありがとう、稜くん」
「うん。空になったら持ってきてくれる?」
「わかった」
彼の後ろ姿も見送って、ふたりきりになる。
ブランケットにくるまってマグカップを両手で持つカナちゃんの隣に腰を下ろした。
彼女がふうふうと口を尖らせてココアを冷ますから、その香りがふわりと漂う。落ち着かせてくれる香りだった。
「カナが最初にルカちゃんのパートナーになったのは、3ヶ月前だっけ。そこから緊縛覚えて彼とお別れしたり瑛二さんの同行とかもして?」
カナちゃんはぽつりぽつりと呟いて、そのまま「凄いなあ」と続けた。
「凄くないよ、必死だっただけで」
「カナは、前のご主人様と離れて立ち直るのに半年かかっちゃった」
いつもの天真爛漫な彼女から出てくるのとはかけ離れた冷えた声。
息を飲みそうになりながら、拳ひとつ分近付いてみる。