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女王のレッスン
第6章 ■孤高のキンバク
「……聞いていい?」
「あんま面白くないよ?ちょっと痛い話だし」
「面白くなんてなくていいよ。本当に痛いのはカナちゃんでしょ?」
さっき彼女が流した涙を思い出して、今度は胸の締めつけ感に襲われた。
自分のことでいっぱいいっぱいだったんだな、と反省して、彼女の肩を抱き寄せる。
「……前のご主人様、女の人だったんだけどね。結構ハードなことしたがる人で、でもたくさん愛してくれる人で、カナも凄く愛してた」
「うん」
「でもある日、ハプバーに連れてかれて、ご主人様が『見てなさい』って言って、カナの目の前で他の男の人とプレイを始めたの」
「え?それって……」
「同意も何もない、ただカナに見せつける為だけの行為。だけどカナが絶望するには十分でね。その時そこに来てたのが瑛二さん」
僅かに声が明るくなったのがわかって彼女を窺い、肩を抱く手に力を込めた。
「そこのオーナーと知り合いだったみたい。立ち尽くしてる所に『お前がされてるのは虐待だ』って言われて、目の前真っ暗になって……気付いたら瑛二さんの車の中」
「連れ出されたの?」
「うん。そのご主人様と話もしたみたいだけど詳しくは教えてくれなかった。車はそのままこの店まで来て、結衣子さんにも会って、ここでふたりはそれぞれのやり方で愛してくれた。稜くんも、ここの他の人たちもね。それでその人に愛されてたことも愛してたこともどっちも思い込みだったって気付いちゃった。そのご主人様はただカナを痛めつけたいだけだったって。元々いじめ経験からマゾだって気付いたから、麻痺してたんだね」
「そんなことが……」
「瑛二さんと結衣子さんが、主従関係にしなくても対等でいいってこと教えてくれた。主従なんてひとつの形でしかないってやっと気付けたの」
ゆっくりとした仕草で彼女はココアを口に運び、「おいしー」と漸く顔を綻ばせる。
私もひと口飲んでみた。