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女王のレッスン
第6章 ■孤高のキンバク
「じゃあ今度、みんなで一緒に遊びに行かない?テーマパークとか、ぱぁっと遊べる所」
「行きたい!楽しそう!」
「うん、そしたら約束」
彼女の目の前に小指を差し出した。彼女は「えへへ」と笑いながら、その小指に自身のそれを絡ませる。
やがて彼女が眠りに落ちるまで見届けて、手の中のココアを飲み干した。
冷めていたけど温かさを感じて、一度ぎゅっと目を閉じ、トレイを持ってカウンターへ向かう。
「ルカ」
すぐに気付いた稜くんにお礼を言いながらそれを預け、店内に出た。スツールには瑛二さんが座ってて、無言でその隣に掛ける。
「カナは?」
「寝てる」
「そうか。目ぇ赤いぞ」
「放っといてよもう……」
自覚はしていたけど、随分前から目の奥が痛かった。
私が泣くのはなんか違うと思って、流せるほどではなかったけれど。
「多少はやるかと思ってたが泣かせるとはね。驚いた」
「挑発したのは瑛二さんじゃない」
「まあそうだけど。……どんなにドロドロした感情や欲望を知ってもお前の世界は真っ直ぐなんだな」
「それは褒めてるの?」
「褒めてるよ。焚き付けた甲斐があった。いいもん見たよ」
お酒のせいなのか、少しふにゃっと顔を緩ませて瑛二さんは言う。
今更の感慨が湧いてきて、どこか夢見心地。縄の感触ももう手には残ってない。
「稜、ユイ呼べるか?」
「今指名ないから多分。ちょっと待ってて」
稜くんが奥へ行くと、瑛二さんが私に向き直る。
「お前休みっていつからなんだ?」
「来週の水曜からで年明けまで休むよ」
「そうか……じゃあ平日の同行も出来るな。あとついでに書類整理とデータ処理と……」
「体よく雑用もさせる気でいる?」
「引き篭もると腐るぞ。感性は常に磨いておけ」
「まあいいけどさぁ……」
「それと練習もな。これまで以上に」
「緊縛の?なんで――」
奥から足音とふたりの話し声が聞こえ、言葉を切った。
結衣子さんが私の顔を見て微笑み、「ありがとね、カナちゃんのこと」と静かに告げて、私は首を横に振る。