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女王のレッスン
第6章 ■孤高のキンバク

静かに稜くんの目が開かれた。
数度瞬き、焦点が合ったらしい。私の足元から徐々に視線が上がって目が合った。
バツの悪そうな顔を一瞬したから、手を静かに振ってみる。
右手でめんどくさそうに顔を覆ったけど、視線は間違いなく膝の上の結衣子さん。頭に乗せられたその手は微動だにしなかった。
私はスマホのメモアプリを開いて文字を打って下の方から彼に見せる。

『外出てようか?』

それを見た稜くんはいつものポーカーフェイスになって、彼女を見下ろし私を見て考えあぐねるように天井を見上げた。
けど、

「んん……」

結衣子さんが身じろいで表情をしかめ、薄く目を開けた。
目の前にいる私と視線を交わらせると、状況がわからないのか稜くんの膝の上のままぼーっと私を見てる。
頭の上の稜くんの手が2回、気付かせるためかぽんぽんと叩いて、目が見開かれた。

「あれ……?は、るかちゃ……?りょ、え……」

上と正面、交互に見て、自分の現状がわかったらしい。
結衣子さんはがばっと起き上がり、肩から落ちたジャケットに慌て、また交互に私達を見て赤面する。
乱れた髪、ちょっとよれたメイクに服。こんなこともあるんだな、と親近感が湧いた。

「おはようございます、結衣子さん」

稜くんが声を掛けると、「お、は、よ……ぅ……」と足を抱え小さくなって顔を覆った。
何この反応。可愛いんだけど。
もっと恥ずかしいであろう場面、割と見てきてるのに。

「……ごめん、ごめんなさい稜くん。いつの間に私」
「俺も寝ちゃってたんで。多分そんな経ってないと思う」
「ああ……遥香ちゃんもごめんね、こんな所」
「貴重なもの見れた感じです」
「ああもうやだ……」

裸は抵抗なくてもこういう姿を見られるのは苦手なんだろうか。
思わずくすくすと笑ってしまったけど、ここはひとまず、と立ち上がった。
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