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女王のレッスン
第6章 ■孤高のキンバク
「稜くん実は彼女いたりする?」
「何、急に。立候補する気?」
「しないよ!エスコートが自然だからなんとなく。育ちもある?」
「大いにあるね。それで女遊びも出来たから尚更」
稜くんが快活な店員から差し出された袋を受け取って、また私を促し来た道を戻る。
「まあ現状特定の彼女ならいない。本職もそれなりに忙しいし夜はこっちもある」
「結衣子さんもいるし?」
「そうだね、バランスとしては凄くちょうどいい」
無表情のまま臆面もなく言うから、それ以上のことが言えなくなった。
だけど、なんとなくだけど、結衣子さんが彼を傍に置く理由がわかる気がする。
サドとマゾの二面性を知った上で許容する存在ということは勿論だけど、冷静に別の視点から見て意見することに躊躇しない彼は、独走するタイプの彼女にとっていいアドバイザーなはず。
瑛二さんも我が道な人だから、尚のこと。
「私、結衣子さんは鷹匠みたいな人かと思ってた」
「鷹匠?なんでまた」
「瑛二さんという猛禽類を従える人っていうか」
言うと、稜くんはくつくつと笑い出し、「猛禽類……」と繰り返す。
「そんなおかしいかな……」
「うん、ごめんね、瑛二さんの例えはともかく鷹匠はどうかと思うな」
「わかってるよ。さっきのふたり見てあれ、って思った。案外普通の女性なんだなって」
歩きながら稜くんは私を見下ろし嘆息した。
「そうだよ。言っただろ、神格化するなって」
「そのことまで言ってたと思わないよ……」
「一緒だよ。まあ同性目線だとまた違うのかもしれないけどね」
人が溢れる休日の街を背にして店に戻ると、スツールに瑛二さんとカウンター越しに結衣子さんの姿。
コーヒーの香りが充満しているその中で、ふたりは適度な距離で相対している。
私達を見た瑛二さんが軽く手を挙げ、結衣子さんはぱっと笑顔になった。
「おかえりなさい。ありがとうふたりとも」
「また甘いもんか。ボンデージ着れなくなっても知らねえぞ」
「体型維持は気を付けてるわ。どうせ食べるくせに文句言うんじゃないの」
子どもを叱るみたいに呆れながら結衣子さんが言うと、瑛二さんは面白くなさそうに口を尖らせる。
その様がなんだかおかしくてくすくす笑いを零し、「向こうにいます」と言った稜くんの後をついて行った。