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女王のレッスン
第6章 ■孤高のキンバク
着付けが緊縛に似ているというのは本当だった。成人式でやったはずなのに、もう随分遠いことのよう。
何度も紐を通され締められ背筋が自然と伸びていく。結衣子さんの手捌きも緊縛そのものだった。
しかも今、私はブラジャーをしていない。
抵抗の末取り払われて呆気なく彼女に胸を晒し、お買い物をした時の数倍複雑な顔をしながらもされるがままになっている。
「変な感じする?」
「します。すっごく。スースーする」
「言っておけばよかったわね。ブラしちゃうとどうしても見た目が綺麗にならないのよ。腕少し後ろに出して」
観念して言われた通りにすると、するりと長襦袢が通され肩に掛けられた。
布2枚。隠れているとは言え慣れた締めつけ感がないのはやっぱ気恥ずかしい。
「普段着物着る時はどうしてるんですか?」
「和装用のを使うわ。それなりにボリュームがあるから潰さないと帯に胸載っちゃうの」
静かに言いながら前に来て袂を合わせるその真剣な目付きに魅せられてつい口を閉ざす。
衣擦れとしゅる、と紐の擦れる音だけが鏡と桐箪笥だけの狭い和室に響く。
「はい、終わり」
幅のある紐をきゅっと縛って結衣子さんが息を吐き、目を伏せて告げた。
「……ありがとうございます」
「いいえ」
立ち上がった彼女が部屋を出ていくのを追い掛ける。
心もとない胸を軽く抑えて居間へ行くと、撮影をひと通り終えたらしい稜くんと瑛二さんが寛いだ様子で床に散らばる縄や小道具を整理していた。
人の出入りが多かったのに、夜が近いせいもあるのか一段と静か。
「随分掛かったな」
「色選びにちょっと迷っちゃったの。どう?ラズベリーみたいな赤」
「いいな、顔映りも」
慣れてる人たちの前だと余計に意識してしまう。隠れてはいるのに。
チカさんはこれに亀甲縛りをした上で外を出歩いていたのだから、こんなのの比じゃなかったはずだ。
「みんなは?」
せめて気を紛らわしたくて尋ねた。