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女王のレッスン
第6章 ■孤高のキンバク
呼吸管理?よくわからないけどどうやら決まったらしい。嬉しそうにスマホを構えて彼は結衣子さんを撮り始めた。
「稜くん、呼吸管理って何?」
「まあフェティシズムのひとつ。やり方によってはハードな部類に入るかも」
「へぇ、ハードなんだ」
「ちょっとそこ寝転がってみなよ」
顎で示されはて?と思いつつ寝転がる。稜くんは小道具の中から羽毛のようなふんわりした羽根を左手に持ち、
右手で急に私の前頭部を掴んで床に押し付け凄んだ。
突然のことに驚いて眉根が寄る。のに、目が全く離せない。指先まで痺れたみたいで手すら動かなかった。
蛇に睨まれた蛙、的な。
「……な、に?」
辛うじて出た声は、彼の人差し指がシッと自身の唇に触れたことでそれ以上の発音を禁じられ、小さな羽根が鼻と口の上にそっと載せられる。
呼吸でそれがそよぐのが微かに見えたと思ったら、稜くんは一層眼力を強めて私を見下ろした。
間違いなく呼吸を読んでる。息を潜めたけど、吐き切る瞬間は必ずやってくる。
「落とすな」
それを狙い澄まして冷えた低音で命令を下し、彼の羽根を持つ指が離れていく。
ちょっと待って。落とすなってこれ、息したら飛んでいっちゃうよね?
言われたことを遂行しようと呼吸を止めた。置かれたそれがそよぐことはなくなったけど、タイミングが悪く今度はすぐに苦しくなる。
目を逸らせない代わりに閉じそうになって、頭の中が『息がしたい』だけになった頃、頭から手が離れ羽根が取り除かれた。
「……みたいな?」
「っはぁ!はっ……」
何もかも突然。荒い呼吸から一気に酸素を脳に取り込んで眩みそうになる。
「何、ほん……死ぬかと、思っ……」
「こんな感じ。でも本当は君は従わないで息が出来たはずだ。従っちゃう辺りいじらしいね」
さっきまでのサディスティックな視線を少し残したまま稜くんは口元を緩めた。
漸く起き上がって取り敢えず睨むも、首を横にひと振りするだけで余裕で躱される。