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女王のレッスン
第6章 ■孤高のキンバク
「……ついでに自分も反応するし?」
仕返ししたくて意地悪のつもりで口にする。
「バレてた?男は損だね、そういう時すぐわかる」
彼が自嘲気味に笑って背を向け着替え始めた。あのふたりのそれを見に行くんだろう。
私も着替えなくちゃ。いつまでもこの格好のままだなんて落ち着かない。
廊下の手前で待ってくれてた彼に寄り、次の部屋を目指して廊下を歩く。窓の向こうは夜。普段過ごす都会のそれよりずっと澄んでいる。
「次で最後か。長い一日だったな」
「朝早かったんだよね。午前どうだった?」
「まあまあ楽しめたよ。どことなく結衣子さん似のモデルがいたね。蝶を使って撮ったのもその人」
「え?」
撮影をしている部屋の障子に手を掛けた稜くんが私を振り返り、私も足を止めた。
「わざわざ?それで私と一緒に昼過ぎ入りに指定したのかな……」
「恐らく。散々撮ってたけどその人の写真は一枚も使われないだろうね。本物に敵うはずがない」
「素直じゃないなぁ。最初からお願いすれば良かったのに」
「本当に。……面白くない」
ぽそりと呟かれたそれに似た響きを思い出して声を掛けようとしたけれど、彼の手は障子を横に引いて一歩室内に踏み出した。
二の句が継げなくなり立ち尽くす。
「後でね」
肩越しに言ってそのまま後手に閉められ、私は夜と彼らの世界の間にひとり、取り残された。