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女王のレッスン
第6章 ■孤高のキンバク
ここに来て初めて訪れたひとりの時間で、着付けてもらった衣類を片付けながら、昼からのことをひとつひとつ整理する。
車の中での結衣子さんの発言の数々。わかったのは結局、瑛二さんに抱かれたかったら好きにして、ということ。
曖昧、言い逃げ、と来て彼女は突飛。発想も発言も。自分と向き合ってきた時間が長い分、彼女は彼女の世界線で生きているみたい。
それから瑛二さん。わざわざ結衣子さんを使わず似たモデルを使うなんて回りくどいことをする。
彼女が嫌がるとかではないし、頼みづらかった理由がある?10年来の付き合いで?
それに、稜くんも。面白くないって、一体何が?前の時は瑛二さんが衝動的に結衣子さんを連れ出したあの時で、さっきのそれも、彼女を撮ることにしたから、だとすれば。
面白くないのは……?
結局よくわからないまま、衣類はひと纏めにし桐箪笥の前にそれを置いてコンデジを掛けながら部屋を出た。
彼らのいる和室に向かい、障子を開ける。
スクリーン代わりに敷かれた布団の上に三点留めをされた全裸の結衣子さんが寝転がっていて、唇には蝶の標本。
それを写す瑛二さん。そのすぐ傍に稜くん。
「稜、ユイ座らせて顔両手で包め」
「ん?ああ、はいはい」
邪魔しないように静かに閉めて、少し離れて座る。
稜くんが結衣子さんの背後に立って、上を向かせ横から顔を両手で包んだ。
綺麗だな、と、素直に思う。そんな3人の姿もカメラに収めてみた。
「目、閉じて息止めて」
不思議な空気。不思議な空間。
気にしないでと言われたとは言え、この3人を同時に見る時はどこか胸が詰まる想いがした。
彼女とそれぞれが関係を持ち、互いにそれを知りながら、侵すことなく一緒にいる。
やっぱり彼らの周りだけ梅雨の季節みたい。晴れやかにならず、しっとりとして、訪れない夏を前に俯くような。
「……うん。いいな」