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女王のレッスン
第6章 ■孤高のキンバク

新しい縄を手にしてまた結衣子さんを抱く。
彼女のスイッチはまだ不完全。さっき喘いだきりで歯をきつく喰い縛ろうとしていた。
だけどそれも陥落間近。息は荒いし目も虚ろ。
胸の下、ウエスト、背面に留めを入れ、余裕がなくても瑛二さんは彼のポリシーと奉仕精神を忠実に守る。
しゅる、しゅる、と麻縄が擦れる音を立てながら結衣子さんの身体を彩っていく。
他を寄せ付けない真剣な表情で彼女を縛っていく瑛二さんは、彼女のことを本当に愛しているように見えた。
他を誘惑する恍惚とした表情を浮かべた結衣子さんは、彼のことを本当に信じているように見えた。

解放された悦楽。
洗練された背徳。
計算された緊張。

どれもが彼らの為だけにあった。

絵師が施すサインのように、最後の仕上げに瑛二さんは結衣子さんにキスをする。
そうして彼女は、世界で一番美しい女性になった。

写真集用のそれなのか、彼の個人的なそれなのかもうわからないほど、瑛二さんは無遠慮に結衣子さんにレンズを向ける。
顔、結び目、身体、脚、挙句の果てには強制的に開かれた秘部。
それらの場所を撮っていながら、彼女の動き、空気、心までもフレームの中に閉じ込めているよう。
熱い息を吐きながら、彼女はシャッターの音に時折身体を震わせ、首を横に振った。

「結衣子」
「も、やめ……瑛二く……」
「ふうん」
「んぁっ!」

腋を伝った指先に背を仰け反らせて美しい曲線を描く。瑛二さんはさも満悦そうにそれを見て目を細めた。
指はその下、胸へと滑って張り出した尖りの先を摘み、彼女の嬌声を思いのままに弾き出す。
今度は背中に手が回った。そっと撫でただけでも結衣子さんは甘い吐息を漏らした。
腰も、太腿や膝、ふくらはぎも、首も腋も鎖骨も、髪を掻き分けて頭に差し込んだそれだけでも、透明感のあるソプラノはそのままに彼女は最早意味を為さない艶やかな声で鳴く。
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