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女王のレッスン
第6章 ■孤高のキンバク
「稜くんは今年の七夕何お願いしたの?」
「何。なんでそんなの知ってるの?」
「カナちゃんに聞いた。ここの持って来てお店に飾るって」
「ああ……なんだっけな。無病息災とかありきたりなこと書いた気がする」
「稜くんらしい」
ふふ、と笑いを漏らして彼を見ると、片目を細めて息をついた。
「リアリストなんだよ。星に願いを、とか柄じゃない」
「ロマンティストでもあるのに?」
「しに来たのはそんな話?話しにくいならこれ飲んどく?」
差し出されたグラスには混ざり物のないストレートな琥珀色。
どう切り出していいかわからなかったのも事実だった手前、一瞬う、となったものの、受け取ってひと口飲む。と、すぐにそのピリリとした味に顔が歪む。
「うあ、喉キツ……何これ?」
「マッカランだよ。口に含む量が多過ぎ。唇濡らす程度でもいいんだ」
今更飲み方を伝授された所でもう遅い。軽く睨んでグラスを返した。
「まあ、実際どう言っていいかわかんないよね。あんなの見せられたら」
手に戻ってきたそれを少し傾け、稜くんの視線は外に向く。
「うん。なんか息苦しくなっちゃった」
「君も?よく耐えられたね」
「瑛二さんの世界を感じようと思ってたの。でも無理だった。深すぎて」
「なんだそれ。それなら手っ取り早く抱かれてみれば?」
「簡単に言わないでよ……」
「簡単でしょ、セックスするくらい」
「結衣子さんとするのも簡単だった?」
「するのはね」
「じゃあ、彼女が抱かれてるのを見るのは?」
軽く身を乗り出して尋ねると、稜くんは数瞬視線を寄越してまた外を向いた。
「……複雑だったな。煙草吸いたいなんて思ったの久し振り」
「え?喫煙者だっけ」
「元ね。辞めたんだ。結衣子さんに雇われる時」
「ああ……苦手だもんね。聞いていい?きっかけとか。結局話してくれてないし」
「いいけど、大した話じゃないよ」
「別にいいよ。それにまたねって言ったじゃない」